いつもの子供が、いない。
いつもがないという、違和感。
「…あのガキ、何処に行った。」
少しイラついた調子で、ジランドは呟いた。
そう、噂のガキ・ニコラがジルニトラにいなかったのだ。
『少し出て行きます。すぐに戻ります。』というメモだけ残して。
何処に行くかも言わないで、黙っていなくなった。
まるで、玩具が急に姿を見せなくなってしまったかのように。
暫くすると、扉が開閉する音がした。
出入りするのは、関係者か、居候のあいつか。
「只今戻りました。」
その場に向かえば、高々に声を上げて笑みを浮かべたあいつだ。
手には、大きな買い物袋を持って。
そのままあいつが自室として与えてやった部屋に入るのを見ればそのまま追う。
「ニコラ。」
「わわっ!ビックリさせないで下さいよ。」
自室にノックもせずに入ったからだろうがそんなことはお構いなし。
そもそも、彼女の自室としての部屋はジランドが与えたようなものだ。
自覚の薄い彼女に段々イラついて、少しずつニコラに近づいた。
ある程度まで近づかれると、ニコラは思わず構えた。
「は、い?」
「…何処に行っていた。」
「あ、買出しにちょっと。」
ちらりと、ニコラは買い物袋を見た。
持っていた買い物袋は少々大きいくらいで、随分買い込んできたことが容易に想像できる。
「…随分買い込んだな。」
「ずっと家事ばかりで外にも出て無かったですし、気分転換も兼ねて。」
買い物袋から続々と買った品が出てくる。食材から日用品まで様々だ。
そんな中、キラリと光るものをジランドが見つけたからか掬い上げれる。
光ってた物は赤と青を基調としていたアクセサリーだった。
「…ニコラ、これは何だ。」
「それはちょっと自分に、です。デザインがジランドさんみたいだったのでつい。」
輝かしい青と、少し彩色が暗めの赤。
その二つを結び付けているのは灰に近いシルバーの鎖。
「青って、ジランドさんみたいでイイなって思えて。」
「なら今後外すなよ?」
「え?許してくれるのですか…?」
ニコラは、ぽかんとしていた。
現に、今ニコラが身につけているアクセサリーといえば半ば無理矢理付けられたチョーカーだけだ。
実際そうではないのだけど、ニコラがジルニトラで居候を許可しているのはジランドだ。
だから、身に着けるものにも許可が必要かと思っていた。
「俺の許可が必要か?」
「…うーん、なんとなく…。」
本来ならば、許可など必要ないのだろうけど何となく、ジランドさんと私は主従関係のようにも思えたから。
あえて疑問詞で問い返すと、ニヤリと笑みを浮かべた。
(あ…なんだか、嫌な予感が…。)
「そいつを俺だと思うなら外すな、コレで満足か?」
予想外の言葉に、またきょとんとする。
いつもの意地悪な笑みが、何処となく嬉しそうに見えた。
青と赤
(…で、俺に直接言わなかったのは何故だ。)
(言おうと思ったのですけど…参謀副長として出ていると聞いたので)
(ちっ、変な心配させんじゃねぇ。)