糸を紡いで


此処数日あける、といって会えなくなったのは。
何日前だったかな。


日課の仕事をやっても、ニコラに声を掛けてくれる人なんで彼だけで。
一日の何分の一かは仕事をしていたが、それを終えて自室に戻る。

仕事して、銃の訓練もして、食べて寝て。
それも終えてしまって、自室でのベッドに沈む。

会話のない無言の日々が続いて、ふと不在の彼を思い出す。



「…きっと、あっちの姿なんだろうな。」



あの、灰色を纏うジランドさん。
あの姿だと別の人みたいで自分の中でも違和感を感じる。



「…今日、戻ってこないよね?」



本来なら、怒られるだけじゃすまない事だけど。
もう、我慢できなくなっているのも本当だ。

恐る恐る部屋に入ると、やっぱり誰もいない。
部屋の確認をしても、日頃から気をつけていたから掃除はばっちりだ。

そのまま寝室に向かって、ぽすんとベッドにダイブする。
ふわりと、彼の匂いがくすぐる。



「会いたいよ…。ジランドさん…。」



匂いで余計に寂しくなって、きゅっとツを掴んで紛らわす。
こんなにも自分の中で大きな存在になるなんて思わなかったから。

堪らなくなって、掴んだまま意識を落とす。
ナミダを、溢して。


暫くして、扉がカチャと開く音がする。
入ってきた影は勿論、主であるジランドだ。

入れば既に部屋には人の気配がして、そのまま寝室に向かえば。



「…何してんだ、このガキは。」
「くぅ…すぅ…。」



人のベッドですやすやと眠るニコラの姿。
いつもなら引っ叩くなりするが、涙の跡に気付けばそのままそっと撫でる。



「ん、むにゃ…、ジランド…さん。」
「…ガキが、どうなっても知らねぇぞ。」



別に欲情だとかしていたわけではない。
唯、この子供らしい姿を無性に弱弱しい存在を壊したくなって。

ぎしりとベッドに腰掛けて、頬にそっと手を撫でて。
そのまま口付けを落とす。



「っ…、ん…。」



ぴくんと震えたが、起きる気配がにない。
最初はからかう程度だったが、段々タガが壊れていくのを気付きつつそのまま深くしていく。

ニコラはニコラで、無意識で酸素が取れなくなり、意識が覚醒していって。
思わず目を開いた。



「ふぁ…、ン…、んんっ?!」



漸く目覚めたようで、覚醒すれば今の展開がどうなのか驚きを隠せない。
その拍子に唇が開くと、そのままぬるりと舌が侵入される。



「ふぅ、んぁ…ン、ふ…っ。」



余りに咄嗟の出来事で、抵抗する余裕もなにもなく。
そのまま舌を絡ませ、段々意識も持ってかれてゆく。

暫く彼に思うがままに貪られ、ようやく開放されれば酸素が足りなくなって浅い息を繰り返した。



「はっ…。下手くそだな、相変わらず。」
「…ジランド、さん…。」



何故キスされてるか理由も判らないまま、まどろになっていた意識で名前を呼ぶ。
戻ってきた嬉しさを噛みしめたい気持ちもあってぐちゃぐちゃだ。



「…戻って、いたの、ですね…。」
「さっきな。」

「後悔、しないか?」
「しませんよ。」



いつもなら、命令ひとつであれこれされるのに、今回は自分の意識だ。

頬を撫でられて、凍てつくような視線にぞくりとして。
でも、この気持ちを押し殺したくない気持ちもあって。

重なる口付けに、受け入れるかのようにゆっくり目を閉じた。





糸を紡いで
(ガキのクセに煽りやがって。)
(ち、違います…っ!唯寂しくなって。)
(それが煽っていると言ってんだ。)