Another face
自分の中にある、違和感。
頭の中で判っていたとしても。
「あれ?ジランドさんは…?」
いつもの姿が見えないと思って聞くと、参謀副長として出ていたという。
だが、すぐに戻ると聞いて安心して日課をすることにした。
平常心で行こうとするも、時々あの姿が過ぎると身体が震えた。
「そっか、あの姿の…。」
ニコラはあの姿、もとい参謀副長としての姿のジランドが少し苦手だった。
まるで、別人のような振る舞い。
あの凍てつくような目は前髪で隠れてしまって見えない。
ニコラ自身の中で同一人物と理解できなくて。
だからなのか、
その姿に、自分が自分でなくなる感覚に襲われるのは。
不在中の部屋の掃除を終えると、丁度いいタイミングでドアが開く。
喜びの表情になるかと思いきや、戻った姿は前髪で目を隠し、グレーの色で統一する参謀副長の姿だった。
「お、お帰り…なさい、ませ、」
「どうして怯える?」
「ッ!」
するりと頬に添えられる手。
本来の姿だったら、頬を染めて目線を俯かせるのに、今は酷く怯えていた。
「な、なんか…ジランドさんじゃなくて…ちょっと、怖い…です。」
前髪が邪魔で、ジランドさんの目元が見えない。
あのぞくりとさせる目が見えないと、不安で一杯になってしまう。
その理由が何となくジランドはわかったのか、笑みを浮かべて。
ジランドは自らの前髪を掻き上げた。
その瞬間に、ニコラの表情が変わる。
「くくく、これなら満足か。」
「あ…ぁ…。」
パクパクと口を金魚のように開かせて、目には怯えの色はない。
ジランドの鋭く凍てつくような視線が此方に注がれていると判ると、全身に電撃が襲う。
「ほう?たったこれでそこまで変わるか。」
余りに見惚れていたから。そのままぐいっと引っ張られてばたんとソファに押し倒される。
後ろに掻きあげたオールバックの髪は、はらりと前髪が落ちた。
「ッ、あ…あの…、なんで…こうなって。」
「どうせお前のことだ。構って欲しかったんだろ?」
すべて見通されている、と錯覚してしまいそうになって頬が熱くなる。
結局、頭の中で違和感が過ぎって。
でも、掻きあげられた姿にぞくぞくとした感情がたまらなくて。
頬に手が宛てられてそのまま唇を奪われていた。
Another face
(くくっ、俺もつくづく物好きなだ。)
(い、嫌…だった?)
(だがこうしてやるのも悪くない。)