コンコンとドアを叩いて。
カチャっと開けると、誰も居なかった。
「あれ…?ジランドさん?」
さっき入っていたのを廊下で見たので首を傾げて辺りを見渡すと。
水の音がした。
その音のするほうへ向くと、シャワー室から聞こえた。
今の場所を考えれば、誰が入っているなんて容易に想像できる。
勿論、この部屋の主であるジランドだ。
「シャワー…中?だったら早く終わらせなきゃ。」
彼がシャワー中ならば、さっさと済ませなければならない。
(多分恐らく私が入っているなんて知らないだろうし)
慌てて、でも丁寧に。掃除を続けた。
「おい、何してんだ。」
「うわぁあっ?!」
掃除に夢中になりすぎて、いきなり低い声にびくっと肩から震えた。
慌てて振り向けば、ジランドさんがいた。
彼は着てはいたが、シャツを軽く着ていただけで鎖骨から胸元は晒していた。
正直、こんなに肌を出さないためか、ささやかな露出ですら色っぽく見えた。
「じ、ジランドさん…!」
「ったく、さっさと終わらせろ。」
「ッ、ッ、はは、はい…っ!」
もうその瞬間だけ目の当たりにしただけで、頬をはじめ顔の中心から真っ赤になって熱くなる。
熱くなる顔を必死に抑えて、掃除をさっさと終わらせる事に集中する。
多分、全部の掃除の中でもジランドさんの部屋を掃除するのが一番楽しくて一番やる気が出る。
サディストな発言が出ようとも、それが自分の中でバネとなるし。
(断じて、マゾヒストではないと信じたい)
「お、お、終わりました…。」
振り向いて全身を彼に向けるが、顔だけは反らす。
(どうしよう…どうしようどうしよう!直視できない…ッ!!)
どくんどくんと、鼓動が煩い。
「おい。」
「ッ!は、はい…?」
ちらっと視線を向ける。ほんの一瞬。
それと声色で気付く。離れていた距離が縮んで腕を伸ばせば触れられる距離になっていたことを。
「ちゃんとこっちを見ろ。」
「ッ!!」
するりと頬に手を添えられ、そのまま反らしていた顔を正面から見れるような位置に運ばれる。
ばちり、と目が合って。濡れた髪が艶っぽくなって、更に鼓動が煩くなる。
多分、このまま倒れそうなほどに。
「くくっ、どうした。顔赤いぜ?」
「…だ、だめですっ。見ちゃ、」
意地悪にくつりと笑う仕草すら愛おしい。
随分彼に染められてしまったのだな、と思いながらも結局は拒否しきれない自分が居る。
それは、何をされてもいいとすら錯覚した。
いや、何をされてもいいのかもしれない。
「まさか欲情したのか?」
「ち、違いますっ!!!」
ストレートな言葉にボンと真っ赤にして拒否の言葉をあげたが、大して効果はなく。
そのあと、何故かひょいと持ち上げられて。そのままベッドイン。
シャツから少し見える鎖骨が、少し色っぽいというか男の色気に見えて。
ぞくりと震えて。
重なるキスに、恥ずかしくなって、目を閉じた。
間違った選択
(ジランドさん…濡れてます。)
(あ?てめぇもだろ?)
((濡らしたのはジランドさんなのに…。))