裏返ししたら愛情


元々寒かった場所が、急激に寒くなると。
どうしても、必要な物が出てくる。



「うぅ…寒さが凍みてきた。」



海の上だからなのか、寒さはより厳しくなった。
いや、この旅客船の人数も少ないのもあるが、何より広過ぎるのだ。

人口密度は少ないし、機械的なものが多いので冷たさをより感じる。
(しかも最低限の明かりと起動くらいしかしてないか、機械熱もないしやっぱり寒い!)



「そろそろ寒くなってきたし…なんとかしないと。」



ニコラの格好は基本的に薄着だ。
仕事するときも、身体を動かすので仕事用に着けるエプロン以外は変わらない。

最初は寒かったが慣れもあったのだが、段々と堪えてくる。
自分に与えられた部屋ですらこんなにも寒いのだ。
廊下に出たときなんか寒さはより何割も増す。


そんな頃に、不意打ちの来訪者。
唐突に扉を開けては、思わず彼の声に震えた。



「おい。」
「ッ!は、はい?!ジランドさん、どうかしました?」



ニコラは、結構な比率でジランドが訪ねてくれるのは凄く嬉しくて笑みを浮かべた。
その光景はまるでご主人様が戻ると喜び跳ねる子犬のようだ。

驚きはするものの、笑みを絶やさないニコラに、一冊の冊子が渡された。



「この書類に目を通しておけ。」
「…へ?」



渡された冊子を改めてみると、それは衣類のカタログのようなものだった。



「なんですか、これ……カタログ?」
「此処から適当なモンでも選んでろ。」

「は…はぁ。」



それだけ言い残して、バタンと扉を閉めた。
カタログを改めてぱらりぱらりと見るが、どれもこれも高級なものばかりで値札を伏せたくなる物ばかりだ。



「…結構するなぁ…。なんでまた……。」



目を通して適当な物を選ぶということは、その選んだ物を手に入れてくれるのかもしれない。
と本来なら思うだろう。

だが、相手はあのジランドだ。
彼が彼女のために買うなんて想像出来ない故に、ニコラは困惑した。


それで、悩みに悩んで。



「…で。決まったのか。」
「選ぶ…と言われましても…。」
「俺は選べと言ったはずだが?」



時間が暫くおかれると、 ジランドが部屋に入ってきた。
(もうノックなしとか、突っ込む必要すらなくなってきた)

用事は、先程の答え。
悩みに悩んで、決定することは出来なかったのだ。

そもそも、期待だけして結局は意味がなかったといわれても悲しいだけだ。
だから、実際にあって聞きたかったのもある。



「…でしたら、ひとつ訊かせて下さい。なんでまた…。」
「てめぇが毎回風邪引く理由を考えろ。」



理由、といわれて幾つか出る。
それは、ここが冗談なしで寒いから。あとは、私の着る服がとても薄着である。

薄着だから寒いのは当たり前の事だ。
だが、ニコラには自分自身が最初から持っていた服以外はないのが事実だ。



「理由……此処が寒いからですか?」
「だったら少しは着るなりしろ。無いなら無いと言え。」



乱暴な言葉だけど、意外な展開に思わずきょとんとしてしまった。
だって、それって、つまりは。



「…心配、していたのですか?」
「フン、仕事をやる人間が倒れられちゃ困るだけだ。」



でも、心配してくれてはいたんだとわかると嬉しくなって笑った。
笑ったら、思いっきり頬を摘まれたけど。

(結局。しっかり素材で、模様が入ったカーディガンっぽい上着を選びました。)
(殆ど一目惚れだったんだけどね。)





裏返ししたら愛情
(でもまさかジランドさんから贈られるなんて…思っても見なかったです。)
(フン。だが、こいつを選ぶとはな…。)
(何となく模様がジランドさんのと似てたので、つい。)