ぱらぱらと降る雨の中で、事件は起きた。
「ん‥、朝‥。」
ゆっくりと目が覚めると、静かに雨の音がする。
心地よい自然の音に意識をゆっくりと白雅は覚醒していった。
昨日から降りだした雨。それによって突然の来客が雨宿りを申し出た。
彼の名はコクトー。
ずぶ濡れの彼を帰すことも出来ず、更に結局雨は止まないまま。
そのため仕方ないとコクトーを一泊させてしまったのだ。
まぁ、あの大雨でコクトー曰く『白雅の家が近かった』との話だったから入れたのだが、まさか泊めるとは思わなかった。
まぁ、一緒に寝るとか言い出していたが布団も敷いたし今ごろは隣に寝ているはずだ。
だが。
「‥‥?」
違和感を感じた、一人用のベッドがやたらに狭く感じる。
それに、何故か人肌の温もりがある。
それを辿るとそれが自分ではない腕だとわかった。
「!!」
慌てて振り向こうとしたが、誰かがいるためか振り向けない。
しかし視線だけ何とか動かせば、誰かというのは解った。
布団を用意したはずのコクトーが何故か、白雅のベッドに潜り込んで眠っていた。
「ななな、なんで‥?!」
「あ?起きたか。」
男性特有の掠れるような低い声。
ちらりと見えたのは菫色の瞳。
それが、昨夜泊めた男。コクトーだとすぐに気づいた。
白雅は一気に覚醒し、抗議した。
「起きたか・じゃないわ!何で此所にいるのよ!布団用意したでしょ?!」
「俺は言ったはずだぜ?“白雅と寝る”ってよ。」
ニヤリと笑みでも浮かべたような声で返し、ぎゅっと抱き締める。
その時に気づいたのだが、所々に服越しにしては余りにもダイレクトなぬくもり。
まるで素肌を直に感じるようなぬくもりだっだ。覚醒した白雅が過ったもの。
「しし、しかも‥まさか、はだか‥。」
「俺は寝るとき裸だからな?」
そう。これがダイレクトなぬくもりの原因。彼自身が裸であるからだ。
ズボンは履いているようだが、上半身は裸のまま白雅にくっついていた。
「うら若き乙女に裸でくっつくなああ!!」
「良いじゃねぇか。いつか裸で抱き合うからよォ?」
「そんな日は来ない!!」
「ったくつれねぇな。」
信じらんないという声でなんとか離そうとしたが、コクトーは離すことはせず寧ろ密着してくる。
更にぐるんと体を動かし、何故か顔の横に手を置いては白雅に跨がる。
「!ちょ、何して‥。」
「俺は本気だぜ?白雅の透き通るような肌も、綺麗な髪も目も‥引っくるめて全部俺のものにしてぇ。」
ギラリと輝く菫色の瞳。
まるで獣のような危険な香りを醸し出し、頬を撫でる。
「こく、」
「この唇だって。俺を呼ぶ声だって。」
撫でた手をするりと唇に移動し、なぞる指に思わずドキリと胸が高鳴る。
そしてそのまま顔が降りて近づいて、気づいたときには唇が重なっていた。
その唇は次第に舌にぶつかり、するりと隙間から侵入しては口づけを続けた。
「んぅ‥ふっ‥‥んぁ‥っ。」
くち、くちゃと恥ずかしくなる水音。
ただの恋人のような甘い口づけから変化して舌が絡む。
何回も啄むようなキスにくらくらと目眩が起こしそう。
暫くしてようやく解放されたが、意識は薄れていった。
「ふぁ‥、ん。」
やっと離れたときは覚醒かけた意識がまたまどろむ。そんな中、優しいような低い声色がそっと囁かれた。
「俺だけのものだ。」
菫色の目がこちらを射抜くように見つめる。その鋭い眼光に。
まるで自分は獲物で彼は獣。
破廉恥彼氏注意報
(さて、と。)
(ん?!何脱がそうとしてんの!)
(折角だから白雅を抱こうと、)
(バカなこと言わないで!)