まさかの、意外な展開がおきた。
と。というのも、私が冗談抜きで怒っていたからだ。
「もう!コクトーなんて知らないっ!」
「悪かったって、な?許してくれよ。」
「イ・ヤ!何があっても許さない!」
色んなことでも多少のことなら許せた。
(主にセクハラ絡みではあるだろうけど)
常に自分が好きだとか言っていた男だったからこそ、
他の人と一緒に居たと云う事実を受け入れられなくなっているのだ。
理由を訊いたとしても、許す気になんてとてもなれず。
といっても、白雅が最も許せなかった理由は他にあった。
本当は、彼女自身が一番触れたくなかったこと。
理由はコクトーと一緒に居た人が同性ではなく異性であったこと。
それも、コクトーと並ぶに相応しいぐらいに綺麗な人だったってこと。
白雅自身の黒く醜い感情、つまりは“嫉妬”ではあるのだが、それを感じてしまった白雅自身が嫌悪感を抱いているのだ。
綺麗な人で、すらりとしていて、モデルのような人。
コクトーからは大学で授業が一緒だっただけだ、なんて言ってたけどその一言は火に油を注ぐような発言だった。
「んー、つまり。あいつに嫉妬しているってことか?」
「ば、ばかっ!もう惨めに思えたから言わないで!」
私なんかがコクトーとは釣り合わないことは重々知ってはいたことだが、
それを思い知らされたような気分になってすっかり落ち込んでしまったのだ。
そんな中、コクトーは軽く頭をポンと撫でた後、わしゃわしゃと撫でくり回した。
「ななっ、ばかっ、何すんの!髪崩れちゃうじゃない!」
「馬鹿はお前だよ。白雅。」
「なんでよっ!」
ばかと言ったら返されて、自分は何も馬鹿なことを言った覚えもした覚えもないというのに。
急にばかにされたような気がして、余計に青筋を立てた。
「俺がお前以外の女に靡くかよ。俺はお前さえいればいいんだぜ?」
そんな口説き文句をサラッと言う彼。
使い慣れたように恥ずかしさも感じない彼は本音なのだろうか、それとも嘘なのだろうか。
それを後者ととった白雅はすかさず反論を言うも、本音だとしたらと淡い期待にぐらついてしまう。
「そ、そんなのウソに決まってる!コクトーにはもっと似合う人がいるって!」
「信じられねぇか?」
「う、うん…。」
白雅が頷けば、コクトーの綺麗な白髪をくしゃりと乱すように頭を掻き、菫色の瞳が白雅を見た。
そのまま彼女に近づき、腰を屈めると丁度目の視線がかちりとぶつかった。
「!!」
「機嫌直せよ、な?」
こつん。と額同士をぶつかり、白雅は驚きと色んなものが絡み合って目を大きく見開いた。
見開けば面白そうに笑う彼。そしてあの優しい紫の瞳にどくんと鼓動が鳴った。
ゼロ距離に顔があって、そんな至近距離で集中的に額に熱を感じる。
その当てられた熱に反応するように一気に顔を朱に染めあげる。
そんな様子をからかうような笑みで見つめてくればどうしようもなくなり、目線だけ逸らす。
不機嫌だった顔も一気に萎むのを飛び越えて。
「なぁ、白雅。顔真っ赤だぜ?」
「しし、知らないっ!コクトーのばかっ!」
「さっきから馬鹿ばかりだな?白雅。」
「うぅう…!…何も言い返せない…。」
あの優しそうな笑顔と、優しい色をした菫の瞳。
長身な彼と、小柄な彼女。
自分だけ、という言葉を信じて素直に彼に折れることになった。
本音と嘘と馬鹿
(大体コクトーが口説き文句言うと、誰にでも言ったように聞こえちゃうんだよ。)
(俺は思ったことしか言わねぇぜ?それを言うのは白雅だけだ。)