そんなに、神経質な訳じゃなかった。
だけど、特別な日だと思っていたから。
久々のお出かけ。すごく、嬉しい。
だってなんだかんだ言って、お出かけするのは恐らく初めて。
(再開の時は成り行きだし、普段は家で過ごしてるしね。)
待ち合わせより少し早めに着いては彼が来るのを待つ。
丁度良い時間に彼が現れると、嬉しそうに白雅は笑ったが…。
「待ったか?白雅。」
コクトーは私服はそれなりに決まってるのに、癖っ毛の白髪は気だるく少しボサボサに見えた。
いや、アレが彼のデフォルトなんだが、気になってしまった。
これが、普通に家で会う時は気にはならないだろうというのに。
「…ねぇ、コクトー。」
「あ?」
反応からして、別に寝坊したとかではなさそう。
(いや、これで寝坊してたとかだったらどれだけ普段ボサボサなのとか思うけど)
それとも、彼自身はこういったのは気にしないのだろうかと思えて。
逆に私が単純に神経質だとしたらそれはそれで嫌だし。
念のため、フォローで言う。
「あ、いや…。何でもない。私が気にしすぎだろうし、気にしなくて、」
「なんだよ。言って見ろよ。」
言いきる前に、グイっと距離を縮めてきた。
真面目っぽい菫色の瞳が近付いて、思わずどきりとする。
…にしても、これが家の中だったらそのままキスとかされるんだろうけど。
流石に公共の場なので少しだけ離れた。
「あの、さ…折角綺麗な髪なんだからもう少しいじらない?
いつもより心なしか癖っ毛すごいんだけど…。」
時々(といっても、主に寝起きとか)癖っ毛が暴走することはあるが、
ここまで癖っ毛の暴走が凄いのもあまり見ない。
そもそも、彼は結ったりせずそのまま下ろすのでボサボサなのがそのままなのだ。
「…まぁ、せめてお出かけの時くらいは、さ。」
「俺くせっ毛だからさぁ、朝面倒なんだよなぁ。」
あ。そっか。自分も少し癖っ毛はあるし、彼の言葉も何となく判る。
普段のコクトーの性格を考えれば、手入れに手間がかかるのは大体予想つく。
いや、今迄少しボサついていてもサマになっていたから何も言わなかったので。
そう考えるうちに、とある案が思い浮かんでは笑みを浮かべた。
「…じゃあ。その時は私が編む。」
『ささ、座って座って』と言って椅子に座らせる。
(でないと身長も座高も高くて届かないの)
髪を手にとって、少しずつ梳いては手際よく編んでいく。
「白雅?」
「だってこんな綺麗な色勿体ないもん。
普段着がかっこいいんだし、私だってこれくらいさせてよ。」
相手の制止なんて殆ど聞かず、もくもくと編んでいけばようやく完成する。
編み終えた先に持ち歩いていたポーチの中のビニールのゴムで留める。
「…白雅。」
「よし、出来たっ。」
矢張り、程良く梳いたのもあってか、ちゃんとまとまりが出来て凄く綺麗に出来上がっている。
黒基調の私服に白髪が酷く映えていて、とても美しかった。
満足げに笑みを浮かべていると、コクトーが振りかえって見つめられた。
「今度からは待ち合わせじゃなくてお前ン家に行くわ。」
「えっ!?」
待ち合わせ、ではなく直接家に向かうと今後の事を話されると酷く驚く。
余計なことをしたのではないか、と少し過ってしまったからだ。
だが、コクトーからの申し出は意外なものだった。
それも、ニッと笑みを浮かべて。
「白雅の必死に編んでる姿が見てぇから。」
いつもなら、ぐしゃぐしゃとされる大きな手が。
ぽん、とあったかく包んでくれて。安堵した。
白に包まれて
(なぁ。白雅。今度は俺が編んでやろうか?)
(…出来るの?)
(コレぐらい出来るぜ?なぁ、いいだろ?)