俺サマ持論


本当なら、この世界に幸せなど存在しないと思っていた。
それでも、この人と出会ってからは色も出てきたのだと思う。



「なぁ、白雅。」
「…ん?なーに?」



彼が、その色を見せたきっかけの男。コクトー。
地獄って、希望すらも与える隙はない。与えられるものは苦痛。
それだけだと思ってたけど、彼との出会いはそれほどまでに衝撃的だったのだ。

そして今は二人で第二階層にいる。
一面の水が、実は毒なのだから余り綺麗とは思いきれないのが悲しい。
その水の中心は地獄の番人の墓があり、一面に浮かぶのは蓮の花だ。

声を掛けられてはくるりと白雅は振り向いた。
振り向けば黒布で右側を覆い、白髪の髪がちらちらと見え、菫色の鮮やかな左目は、綺麗だった。



「お前ェは随分…。」
「?」



何かを曖昧にしながら言うコクトーの言葉に思わず首を傾げた。
しかしこちらを見たかと思いきや、また誤魔化すように視線を反らした。



「いや、何でもねェよ。」
「何よ。自分から振ったのに。」



結局そうはぐらかされてしまうと、今度は彼女から視線を反らした。
視線を反らしたからって、見える景色は色のない景色がずっと繋がっている。

面白味など、何処にもない世界だ。

そんな中、いきなり伸ばしていた腕に何故か鎖が巻かれては何かに引っ張られる。
地獄の番人かと一瞬焦ったが、それらしき気配がない。

慌てて引っ張られる方を見ると、ポスンと何かにぶつかった。
ぶつかった方を見ると、ニヤっと笑みを浮かべる男がいた。



「捕まえた。」
「え?ちょ…!何、して…っ。」
「んー、抱きついてる。」



離して、言う前にぎゅーと力強く抱きしめてくる。
今まで抱きしめられることは何回かあったが、まさか鎖を使うとは思いもしなかったために驚いてしまった。
それと同時に急に抱きしめられた為に、恥ずかしさで回避しようとした。



「そんなの解るわよ!私は…っ、何で抱きついてるかって聞いてるの!」
「ったくつれねェなァ。」
「つれないって違う…!」



カラカラと気にもせず笑いコクトーは気にもせず、更に逃がさないようにした。
固定されていると思いきや、何故か肌を味わうような触り方になっていた。



「んー、柔らけェな。」
「ぎゃあぁ!!何処、触ってんのよ…!」



思わず叫んでは逃げようとしたが、離してくれる様子など何処にもない。
寧ろその手の位置は下がり、胸より下の…腰を撫でてきた。



「いちいち騒ぐなよ。今更の仲じゃねェか。」
「何言って、…!」



急に力が入らなくなってしまった。
それはコクトーが、彼女の耳にフッと息を吹きかけたからだ。

じたばたしていた彼女が、魔法にでも掛けられたかのように大人しくなってしまった。
それを見計らってコクトーは彼女の顎に手を掛け、凭れるようにすれば耳元で囁いた。



「なぁ、白雅。」
「…!!」



凭れるような状態になり、低い声が耳元で囁かれてびくりと震える。
そうなった自分に顔を真っ赤になってしまい、きゅっと目を瞑った。



「み、耳元で…言うなんて…!」
「ククッ、赤いぜ?」



益々彼女の頬を紅潮させていくが、それを面白がるようにくつくつと笑う。
更に赤くなった耳をいじりだす。

解放するように言っても特に耳に入ることはなく、耳の淵に触れる。



「だから…っ。ダメだって、言ってるでしょ…!」
「んー、聞いてねェな。」



そう言ってまた耳に息を吹きかける。
彼女の初々しい震え方につい笑ってしまい、顎をするりと撫でた、
その撫でた顎をくいっと掴み、彼女の顔が見える位置に持ってきた。

彼女の顔は先程の気の強い様子は見せず、すっかり真っ赤になっていた。



「…だ、駄目だって…言ってるの、に…。」
「知らねェな。お前は俺の女なんだぜ…?」



弱々しく言う彼女を一蹴し、独占欲が強いコクトーは、俺様持論をあげてはキスをした。
相変わらず否応しない強引なキスは熱い。
でも、その相変わらずが好きだった。






俺サマ持論
(っは…もう。相変わらず強引にキスするんだから…)
(俺はこれで満足したつもりはねェがなァ?)
(な…!何を、言って…?!)
(というわけだ。ヤらせろよ。)
(なっ、…なぁあっ!!?)