白と黒の祝福


地獄という世界は、苦痛と虚無。
それなのに、何故不可思議なことが起こったか。



「‥あれ?」



白雅は首を傾げた。
目の前に映っているのは、見覚えのある影が‥‥ひとつではなくふたつ。

それも、ひとりはよく知る人物だ。
もうひとりは姿こそ違うが、見覚えがある。
視線を二人に合わせた。



「よぉ、白雅。」
「コクトー‥‥と、?」

「なんだァ?忘れちまったのか?――白雅ちゃん?」



ぞくり、とする震え。
しかも彼から発せられた声は、コクトーという男と同じ声。
そりゃそうだ、だって彼らは‥元々は一人だ。



「!!な、なんで‥‥あんたたち‥分かれてんの!!」

「そりゃ俺が聞きたいくらいだ。なぁ?」
「あぁ、目覚めたらこうなっていた。オレたちが何かしたか?」



いや、地獄で散々大暴れしてるじゃないデスカ。
私は至って平凡に廻るだけでいいっていうのに。



「うーむ‥‥こう見ると‥。」
「あ?」
「二重人格並みにハッキリ分かれてるなぁ、って思って。」



人懐っこい目をした黒布の彼と、血走ったような目をする本性の彼。
布で隠すのと晒すのでは、表情も髪型も変わってしまうからして別人だった。
(いや、二人ともカッコいいのは変わりないんだけどね)



「こうなると‥どう呼べばいいんだろうか‥。」



困ったことに二人ともコクトーであるからして、どっちをどう呼ぶか悩んでしまう。
暫く白雅が考えれば、ピンッと何かが思い浮かんだ。



「んじゃ、こっちが“白”で、こっちを“黒”と呼ぶよ。」
「‥‥その理由は?」
「なんかいつも見てる方は健全ーっていうか人がよさそうだから。
本性は裏側っぽいから黒化みたいな?」



俗に言う、黒属性が本性の彼とは、中々言うもんだ。
白は普段見慣れている方。彼もまた、時々黒が出ないか少し心配にはなるが。



「でも面白いなー。まさかこんな風に会うなんて思いもしなかった。」
「そりゃ今日は特別だからな?」
「?何がとくべ、」



言い終わる前に、白雅はその場から何故か壁に追いやられる。
真正面には二人。後ろには壁。



「折角“白と黒”の俺に分かれたんだ‥楽しくやっていこうぜ?」
「ククッ、二人のオレで‥白雅ちゃんはどんな風になるか楽しみだ。」

「ちょ、まっ‥やぁああああ!!」



嫌な予感はしたが既に遅し。

この日。白と黒に分かれたコクトーが、
とんでもないヤツに変貌すると初めて思い知るのでした。






白と黒の祝福
(お祝いしたかったら普通にすりゃいいのに‥)
(普通じゃ面白くねぇからやったんだろ?なぁ?)
(あぁ、こうやっていじるのも中々楽しいぜェ?)