仮面の下の君に
優しい菫色の左目。だけど、黒で覆われた右はというと。
「‥‥うーむ。」
「どうした?白雅。」
コクトーのことをずっと見続けていると、逆に覗きこまれる。
白雅はひょいと覗き込んだコクトーの頭の黒布の端を摘まんで訊いた。
「ちょっと、外して見せて?」
「あ?なんで外さなきゃならねぇんだよ。コレ見たら怖がるだろーが。」
そう。外すように言ったのはコクトーの黒布の下、つまりは素顔。
しかし素顔は右半分はミイラ化されていて、その絵はホラーにも感じてしまう。
コクトーの何度死と再生を繰り返した末のミイラ化。
それほどまでに執着した末だからこそ、普段から隠していた。
それを、白雅は素顔を知った上で外すように言ったのだ。
「いやね、外した時ってこっち側だと‥だと。」
「こうか?」
そう言って何の躊躇いもなく黒布に手を掛ける。
しゅるりと静かに音を立てて、きつく巻かれていた布が緩くなる。
「!!ややっ、わ、わざわざ‥。」
「白雅が外せと言ったんだろ?」
話している間にもはらりと顔を覆った布は呆気なく剥がれ、その下からは土色の肌が現れた。
ミイラ化された肌と共に黒布によって隠された白髪も一緒に表れて。
「で、外させた理由はなんだ?」
「そりゃ…。こう見ると、ね。」
正面から少しずれて、右に白雅がずれれば…コクトーの左側に視界をずらす。
普段は黒い布で覆っていたが、それが外されたことによって長い白髪が現れる。
長髪が露わになり、素顔を晒した横顔。
彼の左側は何処となくカッコ良く見えたのだ。
「?」
「うーむ…。やっぱり…カッコいい、のかしら?」
黒布で隠した時点でイケメンの類ではあっただろうが、素顔を晒しても類に変化はない。
寧ろ一緒に隠した白髪が露わになったことで、余計にそれを引き立たせたように見えた。
「ククッ、…白雅。」
「!なっ、何…?」
そんなことを呆然に思っていると、ふと彼の瞳が変わる。
いつもの人懐っこい笑みを含んだものではなくて、ニタリと獰猛な何かに近い瞳。
優しい菫色の目が、凶悪を潜めた色に変わる。
「折角だ。遊ぼうぜ?」
「………はい?」
ちろりと舌なめずりする様は、まさに獣のようだ。
そこからは言うまでもなく、彼によって遊ばれたのだった。
いや、もうひとつの彼に。というべきか。
仮面の下の君に
(だ・か・ら!なんで毎回毎回こうなるの!)
(ククッ、なんならもう一度遊んでやろうか?)
(いい、いや、結構。丁重に断るよ!)