モノクローム・ラヴ
いつもの影を探したくて、第二階層から降りたり昇ったり。
本当なら彼が来てくれるのだけど、逆に探したくなって。
きょろきょろと見渡していると、見慣れた影を見つけた。
(この間に朱蓮に遭遇したりしては何処に行ったか聞いたりして)
しかし。見慣れた影が、二つある。
その理由がすぐにわかって、ダッシュで走りながら声をかける。
「ねぇっ!コクトー。」
「『あ?』」
「…あ。いっけないいっけない。」
見慣れた影だというのに、うっかつ“二人”の名前を呼んでしまった。
つまり、見慣れた影が二つというのはいつも見ているときのコクトーと本性を表したコクトーのことである。
どちらも間違いなく“コクトー”であるため、二人とも反応してしまうのは無理も無い。
白雅は前者のコクトーを“白”。本性のコクトーを“黒”と呼んでいるのだ。
(理由は健全っぽいコクトーだから白で、本性のコクトーの方は逆に黒属性を感じるためだ)
「白と黒って、まるで一緒に並ぶと兄弟みたいだよね。」
「兄弟も何も俺たちは同一人物だぜ?」
『そうだぜ、白雅。ンなのわかってんだろ?』
そう。見た目だと大分変ってしまうが、それがまるで別人さに思えてしまうのだ。
白の彼は黒布で顔の右半分を覆うが、菫色の左目は人懐っこさを感じさせて好青年って思わせる。
逆に黒は黒布が晒されたことにより右側のミイラ化が現れ、左目は狂気を孕ませる危険人物を感じさせる。
しかし、これは第一印象であったので、
今の白雅はどちらも“コクトー”であると認識している。
「そりゃ判るんだけどね。何か余りにも別人だからそう見えてねー。」
『なんならひとつ聞こうか白雅ちゃん?』
「ん?何…?」
黒がいきなり腕を掴み距離を縮めると、危なっかしい菫の左目で射抜く。
彼のああ言った部分に酷く私は弱いのだ。
『オレとコイツ、どっちが好きなんだ?』
「えぇっ?!な、何を…いきなり…!」
「お。それは俺も聞きてぇな。」
唐突に言いだした黒の提案に白が乗っかってしまったようで、
片腕を掴まれ、同じく左の眼でじぃっと見つめてくる。
「ちょ、ちょっと!同じコクトーなのに決められるワケないじゃん!」
『良い子ぶんなよ。仕返しはたっぷりしてやるからよ。』
「いやいやいや!余計に言えないわ!」
するりと頬を撫でられ、ちろりと舌舐めずりしてきた瞬間に身の危険を感じた。
(いや、命の危機というより貞操の危険だが)
「安心しろよ、白雅。俺はどっちを選ぶかなんて判ってるぜ?」
「だめだ…絶対言えない…!」
白は表情は優しいけど、危険を除けば殆どの部分は黒と一緒だ。
故に、貞操の危険は変わりないため口をどもらせた。
「なぁ、白雅。早く言いな?」
『どっちを選ぶんだ?白雅。』
二人は最初冗談だとか思ってたのに、次第にそれが本気に思えてしまって。
どくん、どくん。と白雅の心を揺り動かす。
なんだかんだ言っておきながら、二人とも優しい。
それに、大好きなコクトーであることには、変わりないから。
「そ、それは…。やっぱり二人とも同じコクトーだもん。選べないよ。」
そもそも二人のどちらかを選ぶなんて、白雅には出来ないのだ。
恐る恐る、申し訳なさそうに言えば、ちらりを二人を見る。
『…だろうな。』
「え?」
ニヤリと笑みを浮かべる黒の表情に思わず何かが過る。
まさか、必死に考えた末の答えに気づいていたのだろうか。
「お前の事だからどちらの俺も選ぶんだろうなってな。」
「ッ!ずるい!私凄く困ったのに!」
やっぱり気付いていました、と。しかも白だけでなく、黒もだろう。
だけど一瞬にして気が抜けてしまったのかぺたんを座り込む。
「…ま、安心しろよ。」
「え?…え?」
『あぁ、より愛して見せろよ。』
あぁ、やっぱり。
どちらを選んだとしてもそうでなくても。
結局二人とも好きだってことは変わりないみたい。
モノクローム・ラヴ
(判ってた上にこの展開とかアリなの?)
(アリに決まってんだろォ?白雅ちゃん?)
(俺たちに好かれた時点で気付くべきだろ?)