リミットアウト
ひとつひとつの行動が。
私のタガを壊していく。
「なぁ、白雅。」
「はい?どうかしました?銀城さん。」
例によってマンションでくつろいでいると、カウンターで座っている銀城さんから声がかかる。
ソファの感触が気に行ってしまったのもあって、ぬくぬくしながらその場で返事する。
「“ソレ”どうにかならねぇ?」
「‥‥はい?」
銀城さんが言う“ソレ”と指したものがイマイチ判らなくて首を傾げた。
そう言うとすっと立ち上がり距離を縮めると、ソファの隣にどっかり座る。
「何で他のヤツらは名前で俺は名字なんだよ。」
「‥‥あ。」
「今更気づいたのか‥。」
ヤレヤレとため息混じりにひとつ。
確かに名前で呼んでいないのは彼だけだ。
名前の後は“さん”とか“君”とか付けてあとは呼び捨て。
(まぁ呼び捨てなのはリルカだけなんだけど)
そうなると、何故か銀城さんだけは名字で呼んでいた。
(恐らく第一印象が“おじさん”だったからかもしれないが)
「確かに‥、‥そうでした。呼び方って一回言っちゃうと中々変わらないんですよねー。」
言われてから気付くなんて。
しかし、これでも今の状態にするのは結構大変だったのだ…地味にだったけど。
だが、彼女はニックネームでもないが、一回呼んでしまうとそれをずっと呼んでしまうのだ。
「で、でも漸くおじさんから銀城さんに定着してきたのに‥。」
「ならついでにもういっちょ変えるか?」
彼の言葉に思わず固まってしまう。“ついで”に何を変えると言うのだ。
(しかも変えるの銀城さんではなく私だ!)
「変えるって‥何に?」
「決まってんだろ?」
「!」
後ろから抱き締められるような感覚に、また変に胸が高まる。
とくん、とくんと穏やかなはずなのに、今じゃ大分煩くなっている。
銀城さんの逞しい腕で後ろから。
何回もこういったシチュエーションはあるのに、何でか慣れない。
多分、それは。キスをされたあの日から。
「“空吾”って呼べよ。白雅。」
「?!」
首筋を撫でられ、低い声で囁かれ。
私の感情はリミットアウト。
唯でさえこの男には、変な意識の所為でやたらに鼓動がうるさいのに。
追い詰めるのが好きな彼の手によって壊されてしまう。
身の危険を感じて離れようとするも、回された腕のまま拘束されて離れられない。
肩に顎がのっかかり、耳元に吐息が掛かってびくりと震える。
「だめっ、誰か‥っ。」
「今は誰もいねぇぜ?俺が出払わせた。」
益々解らなくなり、そう指示を飛ばした男に向かって
『なんでそんなことを!』と聞いたら笑みをひとつ。
『白雅を頂くため』と真顔で答えてきた。
リミットアウト
(だめだめっ!そんなの許可しないって!)
(許可も何も俺が決めたことだぜ?)
(犯罪重ねたいのかあんたは!)