黒き来訪者



見慣れた生活の空間。
それを彩るようにコンポからは音楽が流れる。

久々にヘッドフォンで聴こうとすると、インターフォンが鳴る。
誰だろうと思い、ヘッドフォンを首に掛けたままドアを開ければ。

二度目の来訪者が現れた。



「…で、なんで。また……?」
「ん?まぁ気にすんなって。」



いやいやいや、気にしちゃいますよ。
銀城さんは今回はお決まりのラーメンはなくて、邪魔するしない聞かずにちゃっかり部屋に入る。

ただ、何故この男は私の部屋の場所を知っているのか・ということだ。
ソレを聞こうとするも、それを妨げるようなタイミングで。



「なぁ、白雅。」
「な、んです…か?」

「お前が淹れる珈琲が飲みたい。」
「…え?」



一瞬真剣そうな言葉に身を構えてしまったが、まさかの意外な言葉にきょとんをしてしまった。
このタイミングでそれを言うか。って。



「この前は烏龍茶だったしな?」
「まぁ…インスタントでもいいならいいけど。」



烏龍茶だったのは、その時はラーメン持参だったからでしょうに。
とか思いつつも頷いて一端席を立つ。

もうひとつの白いマグカップにインスタント珈琲を淹れつつ、
『ミルクや砂糖を入れますか?』と訊かれると『ブラックで』と返された。

出来たとコトンとテーブルに置いて渡せばそのマグカップを受け取って静かに飲んだ。



「ふぅ、あったまるな。」
「そりゃホット珈琲ですしね。」



珈琲をゆっくり喉に通し、ゆっくりと何回も飲んでいく。
何のために此処に来たのかさっぱりわからないまま、彼が言葉を紡ぐまで黙って待つ。

暫くしてマグカップを置けば、おずおずと口にする。



「…あ、あの……それで…。」
「ん?そうだな…。……白雅。」



真剣味を帯びた声色に思わず身体が震えた。
いや、声だけではない。
表情も、目もギラリと強い真剣さにぞくりと震えて圧倒されてしまう。



「単刀直入に言う。お前には、俺と同じ“力”があるのと知ってるか?」
「…え?何を、言って…。」



今、この男が何を言っているのか解らなかった。
同じ力?心当たりなんて、ないはずなのに。

どうしてだろう。酷く心が揺れ動く。



「何故俺が“お前の家を知っていたか”と訊いていたな。」
「あ…うん。」



白雅は素直に頷いた。確かにずっと訊きたかったことだ。

偶然と言う言葉で片付けるには余りにも違和感があるし、何よりあの時は記憶が途切れていたのだ。
そう、このまま話を訊けば何故記憶が途切れていたかも判った。



「な、にを…言って…。」
「ま、今は何も知らなくていい…”今は”な。」



“今は”と意味深に言葉を残す銀城の言葉には、白雅は益々混乱した。
知らなくても良いというわけにはいかない、と彼女自身の本能的な何かが教えたからなのかもしれない。



「だったら、興味があるならコレに連絡しな?
今日は元々ソレを渡しに来ただけなんでな。」



そう言って、銀城は白雅に一枚の黒いカードを渡してきた。

白雅には、この男が何を言っているのか正直解らなかった。
だけど、受け取った黒い名刺には、何処か惹かれたような…そんな気がした。

“XCUTION”と描かれた黒い名刺・・・黒いカード。
これに連絡して、後に“あの場所”に向かったことは後に話すことにする。






黒き来訪者
((えっと…コレ、なんて読むんだろ))