オトカゲ・カナタ


最初は、すべてが夢だと思っていた。
だけど、そんな夢の中で一人生きていたんだよね。ずっとずっと、守ってくれてたんだよね。


奇跡的に、完現術らしきものを会得した白雅。
しかし体力を予想以上に奪われるようで、時間が短いのが難点。

幸いコツというものを掴んだから、出そうと思えば出せるがいざコレを使うとなると短い上に消費が大きい。
故に、水上白雅は体力づくりの修行が専らとなってしまった。



「ふぅ…完現術って、難しいね。」
「ま、ンなもんは一旦習得すりゃどうでもなるがな。」

「んー…まぁ、ね。出てるけどすぐ切れちゃうんだよね。」



やっと完現術らしものは出たのだが、まだハッキリとはしてない。
暴走するように突発的に出てくるが、あの時にはっきりと思いだした。

唯、ハッキリと確定していないのが問題なだけ。
それもそのはず。彼女のきっかけによる外れたタガが少々厄介なだけだから。



「白雅の場合、そのまま放置してっと色々問題出そうだからな。」
「…う、む…まぁ。確かに…。」

そう。元々XCUTIONに誘われた理由を聞いたのだが。
それは『力をコントロールし、暴走を抑えるため』と話していた。

偶然ではないが、偶然に偶然を重ねて、水上白雅という存在を発見できたことは奇跡とも言えるだろう。


きっと、あの時に見つけて貰ったのが色々と良かったんだと思う。
(あの時はおじさんとか言ってて申し訳なく感じた…。)



「どんな力かは判ってんだろ?」
「んー、大体は。音に関連するのは判るんだけどね。媒介となるものもわかるし。」



力が発動(言い方は発現だったっけ?)する時は銀城さんと初めて接触したとき。

あの時はそんなに意識をしていなっかけど。
きっと弟が私を守ろうと現れたのだろうとか思う。

弟との意識内の約束。
そして自分自身の世界と音楽と例え、いつも持ち歩いていた音楽のヘッドフォンが実は媒介だということだった。


私の中の誇りというものは、おそらく弟のこと。
唯一自分の世界に入れる音楽が、私が弟の存在を再確認させたのだろうと思う。

だから、一刻も早く。という感情で駆り立てた。



「ねぇ、銀城さん。修行付き合ってくれません?」

「今日のノルマは?」
「既に終わってます。大丈夫です。」



ぎゅっと拳を握り、自信に溢れたような笑みを浮かべる。
何より一番、核心に触れてくれると思うから。

そして。一番に解放した姿を見せたかったという理由もあって。



「仕方ねぇな。俺に修行を求めんなら手加減しねぇぜ?」
「……少しだけ加減は欲しい、かな?」


と、言ったものの。
加減なんてするわけでもなく、容赦ない攻め方をされてボロボロになるのは言うまでもない。
(絶対この人判ってやった‥、サディストめ‥。)



「はぁ…はぁ…。も、無理…。」
「だらしねぇな。ノルマクリアしてその程度か?」

「加減して…って、言ったでしょ…?」



やっとの思いで言えた台詞がそれ。
息も荒く、呼吸を浅く繰り返して何とか落ち着きを取り戻そうとする。

それが、中々出来ないのは知った上で、だ。



「でも、ま。結果オーライだな。」



銀城さんは大剣をしまう。どこか、嬉しそうな笑みを浮かべて。
(多分、あんな笑みは初めてかも。)



「え…?」
「今のお前なら出来るはずだ。意識を集中しろ。」



こくりと頷き、言われたとおりに眼を瞑って息を吸ってはいては奥底に意識を置く。

そうすれば、格好は私服が若干変化し、コートと纏う黒装束に統一され。
長く下ろしていた髪はひとつに結われており、結ったリングは赤色。

ヘッドフォンは相変わらずのお気に入りのデザイン。
しかし周りの空間は何処か落ち着いて、澄んでいる。

これが、水上白雅の完現術。



「これが…私の、完現術…?」

「良い様になってるじゃねぇか。折角だ。名前をつけねぇとな。」
「私が付けていいかな?…そうだな…。」



音の世界は彼女の世界。そして、この力は意識の中で生きている弟の為。



「“Sound of Shadow”(サウンド・オブ・シャドウ)」



音とは世界の事。影とは弟のこと。
音と影は、私自身であり。私のすべての世界だ。





オトカゲ・カナタ
(にしても、あの時より笑ってるな。白雅。)
(えっ?!そ、そう…かな?なんか変な感覚…。)
(ま。これからもよろしくな?)
(あ…うん。有難う。)