普段の彼には慣れてきたけど、
何故。このような展開になったのか。
「ナマエ。」
「…はい…?」
「君のことが欲しいな。」
「……は?」
ぴたりと、動きも思考も停止する。
この男は、一体何を口走ったのかと疑いたくなるほど。
一応今は口調とかは青年モード(勝手に命名)ではあるけど、
言い放った内容は完全に団長のときのソレ!
「ちょ、待ってくれません?何で今までの状況でそっちになるんですか。」
「だって君とはサシで殺り合ってるし、お互いを判っている。問題ないと思うよ。」
「いやいやいや、大アリですって。
確かにあの時は自分の図書館守るために闘いましたけど。」
確かに闘った。自分の祖父の本と図書館を守るために。
だけど、相手は危険度Aランクの人物だし、私はライセンスは取っただけでプロではない。
(プロになってもよかったんだけど、あくまで自分の好きなように生きたいだけで興味はないのです)
あの時に自ら殴り合いでのサシを申し出たのは、
念勝負になってしまったら、勝ち目はないどころか殺される危険を少しでも下げるため。
(まさか、それで受け入れてくれるとは思いもしなかったけど)
そもそも。なんでそんな方向性になるか皆目見当がつかない。
「それに、私はお客さんとしてなら歓迎するけど、この為ではないんですよ?」
「おや、そうだったのかい?」
「また判りきってるのに誤魔化したようにする…。」
「それは、ナマエ自身がよく判っているだろ?」
はぁ、と思わずため息つく。
もうついていけないと珈琲に口を付けて平常心を取り戻そうとする。
パタン、と本を閉じる音が横からした。そして、気配が変わる。
(若しかしたら、あのスイッチが入ってしまったのかもしれない)
「言ったよな?俺は“手に入らないものは奪う”と。」
「そりゃ盗賊・幻影旅団の団長ですものねー…。」
目線と合わせたらアウトだ。
合わせたら何が起きるか判っているから、敢えて外した。
それでも、この男はわかっていたかのように。
バン、と追い込んで、距離を縮めてきた。
私も反射的に離れたが、また詰められる。
「ッ!」
「だったら、観念してくれるよな?」
出たよ。もうひとつの彼。意外に俺様論。
あの優しく柔らかい黒の瞳ではなく、すべてを呑み込む黒色。
ズイっと近くまで距離を縮められると、また離れようとしたが腕を捕まれ阻止される。
顎を掌で捉え、唇を親指でなぞるようにしながら、黒の瞳で思考をも呑み込む。
(ちょ、これ、も…、危険危険!)
「あ、あの、その、近い…です。」
「そりゃ俺がナマエに迫ってるからな。」
「クロロさん…離れて、くれません…?」
「んー…そうだな…。」
暫く危うい体勢を保ったまま考えている。
この隙に何か打開策を考えていたけれど、それも数秒で静寂が壊れる。
「却下。」
これ異常ないってくらいの爽やかな笑みを浮かべては、否応関係無しに唇に感触が伝わった。
(あぁ、多分。今後無事で済まされなくなりそうだよ。)
俺様論カデンツァ
(何さらっとキスしてるのよ!)
(ん?ナマエに宣誓布告。)
(しなくていい!)