平和的オペレッタ
平和的な時間に、少し介入されたもの。
それは、彼女自身の日常をほんの少し崩した物である。
「ナマエ。」
「なんです?」
「折角だから、キスしようか。」
「何が折角なんですか。」
却下。と返しては、ぱしん、と一蹴して振り払う。
どういう経緯を辿ればこんな展開になるのか。
ナマエ自身は勿論の事知ることもなく、この男の考えている事も判らない。
払われた手を軽く手で触れてクロロは軽く息をつく。
「ふぅ、ツレないな。」
「…アンタ、ホントにあの極悪非道と言われてる幻影旅団の団長なんですか。」
「まぁ、そうだな。」
「あっさり認めないで。」
最初はもっと怖い人かと思ったのに、変態だったり総崩れだよもう。
(いや、サシの殴り合いだとか影の違和感の時は怖かったけれど)
ナマエはため息を付いて視線に映すのを止めて、淹れて少し冷めた珈琲に口を付けた。
「なぁ、ナマエ。」
「キス以外でしたら取り敢えず聞きます。」
視線は例によって合わせない。
もし、コレでキスを求められるような展開になったなら、尚更合わせていけないと思うからだ。
この距離ならば、最悪蹴りは入れられるし。
(それを素直に受けてくれればの話だが)
「君はここに住んでいるんだったな。」
「そう。」
「生業は?」
「…え?」
意外だ、と感じて投げやりの答えをやめた。
いや、答えだけでなく反撃の術やら何やらも。
視線をちゃんと合わせては、彼・クロロを視界に映した。
意外すぎるまともな質問に、こればかりはちゃんと答えて問題ないだろう。
「此処はナマエの言うように“図書館”なんだろ?なら生活は何で立てている?」
「んー…お菓子。」
「菓子?」
「そ。私これでも先生やってるんで。」
彼と会うときは夕方や夜が多いから知らないだろうけど、
実はこの街ではそこそこ名の知れた菓子の先生であった。
週に数回、昼から夕方前にかけて色々なレシピを持ち込んでは教室を開いている。
これも元々エレナ自身が好きで始めた事だったが、口コミなどで広まり、
更にそれを知った業者までお世話になっている、という話だ。
おかげさまで、ひとり分の生活費は十分に成り立つ。という訳だ。
それを話したら、クロロはニコリと笑み浮かべて。
「ナマエ。」
「なんです?」
「俺にひとつ作ってくれない?」
最初の問いかけにはデジャヴを感じたが、
至って普通の解答に固まったのは言うまでもない。
平和的オペレッタ
(何か…リクエストとかあると助かるのですが)
(そうだな、何でもいけるがプリンとか。)
(え?…プリン?)