JOKER



攻め手と守り手。そして私はいつまでたっても防戦一方。



「なまえ。ゲームしようぜ?」
「やだ。だって罰ゲームつけるんだもの。」



ニヤニヤと手に持っているのはカード。
ダウト、大富豪、ブラックジャック、はたまたシンプルにババ抜き。
至ってオーソドックスなトランプ・カードだ。

普通なら断る理由はない。ただし、断る理由になるのは相手が相手だから。



「そうすりゃ本気出してくれるだろ?」
「でも嫌。アンタには人の心理が読めるんだもの。手を抜いたって勝てないっての!」



こんなチート紛いな能力があると知ったのはつい最近。

何度やってもいろんな手段用いても勝てない気がして、
『俺はIQ200はあるからな』なんてだけの理由だとしても余りにおかしいから訊いた。
(しかし後にIQは200もあるなんて嘘でホントは160。訊いたのは確か…榛葉先輩、だったと思う。)

訊いて改めて問いただしたらあっさりと白状しおった。それも、豪快に笑って。



「それに…。」
「?」

「私は手加減して欲しくないの!」


そう。勝てない理由は何より手を抜いて負けるのが一番嫌いだから。
手を抜いて負けるなんてこんな馬鹿馬鹿しいことあって堪るか!という彼女の意地っ張り。



「だったらそれでいいじゃねぇか。」
「でも負けるのも嫌なの!」



同時に、負けるのも大嫌いである。
手を抜いて負けるのも嫌いだし、負けること自体も嫌いなのだから。



「かっか。そりゃ困ったな。」
「困ってない癖に白々しいわ!」



こんな相手に何故惚れられてしまったのか、理由も見当もつかない。
なまえ自身はサボりの常連以外は、成績も優秀以外は、至って普通のはずなのに。



「だからゲームしない。カードゲームだったら尚更ね!」
「俺のところには他のやつもあるぞ?」
「頭脳ゲームの類だったら受けない。自ら罰ゲーム望んでいるような感じするし。」



自ら罰を受けたいモノ好きは何処に居るんだか。
この場で名乗り上げるものが居るなら是非見たいものだ。

しかし。この黎の隙が仇となった。
彼にまんまと後ろから抱きしめられ、拘束されてしまう。

気付いた時には既に遅く、力強い抱擁を無理矢理受けてしまう形になった。



「!は、離れ…!」
「だったらこうさせろよ?なぁ?」
「!!な、何を言って、」



耳元でわざとらしく囁くこの男。逃げようにも、男と女の力の差は歴然。
身を捩ってもびくともしない。



「なまえが俺とゲームしないなら、代わりのモノを頂きたいしな?」
「なっ…!。」

「俺は別にいいんだぜ?なまえのコレでも貰えれば素直に引くしな。」



そう言ってわざとらしく唇をなぞっていく。その動かし方は、何とも卑猥に感じた。
ファースト、セカンド。続けて奪うつもりなのかこの男は。
(いや、奪われたのはそれだけじゃないのだが。)



押してダメなら、というやつなのか。

確かにコイツに負けるのが嫌いだとか…それも理由の一つだけど。
俗に私は押しに弱いのだ。

その押されっぱなしの状況に慣れてきたと思いきや。
こんな手段を用いて私はまた揺り動かされる。



「わ、わかったよ…。受けてやるから離れてよ。」
「かっかっか。決まりだな?」



押してダメならなんとやら。というヤツか。
そうだと解ったうえで了承して、結局ヤツに根こそぎ奪われるのだ。






JOKER
(結局負けた…か。で、今度は何をしようっての?)
(そうだなぁ…キスをひとつ、)
(却下。)
(仕方ねぇな。じゃ俺のこと名前で呼べよ。)
(はァッ!?)