ヒトメボレ。



アンタなんて大嫌いだ。


何もかも見通すようなその瞳が。
頭の中をぐちゃぐちゃに掻き乱すような眼が。

視線を合わせただけで、何もかも奪われてしまうようなそれに。
そして、見られたくない所まで見られてしまうような気がして。



「なぁ、こっち見ろって。」
「イヤ。」



大嫌いな男・安形との会話の始まりから途中からはこれになる。
生徒会室で呼ばれて渋々行くけれど、それを必死に抵抗しては拒み続けるなまえ。
これが二人の日常となりつつあった。

本当ならば、半分嫌な気持ちもあって無視をしても良いのだけど、
時々放送室だとか教師の力を使ってまで呼びに行くから渋々訊くのだ。
(一回無視したら放送室で呼ばれたり教師に行くよう仕向けられたからそう学習した)


何でこんな男に惚れられたのか知る筈もなく。
何てこんな私を見るようになったのか知らず。



「大体何で私を呼ぶのさ。私を誰だと思ってるの?」
「お前は開盟の優等生・みょうじなまえだろ?」
「…そんな光栄な呼ばれ方なんて嬉しくないわ。」



優等生キャラだってささやかな演者。
誰にも眼にもとまらず、誰も知られないように生きて、誰も知らないように消える。

そうじゃないと、生きづらくて仕方がない。
それなのに、それなのに。

何でアンタはそれを邪魔するの…?



「今のアンタなら私の考えてること解るんじゃないの?
いつもみたいに、さ。」



皮肉っぽく嗤えば、彼もニヤリと笑みを浮かべた。

彼の得意技じゃない。人の心を読むのって。そういうところが嫌いなのよ。
勝手に人のテリトリーを土足で入り込む感じ。
それを知ってか知らずか、何度も何度も。

優等生キャラが演者だってバレても私にとっては痛くも痒くもない。
寧ろ、軽蔑したかのように去ってくれれば助かるわ。



「――――まぁ、大体な。」



ホラ、やっぱり。アンタが思ってるほど私は利口ではないの。

ぽりぽりとクセのついた髪を気だるそうな調子て掻く。
見当がついているのなら、大分助かるわ。

私の考えていることが解って、尚且つその答えを知れるのなら。



「まぁ、つまりだな。」



なまえは小さく息を飲んだ。

知った上の答えで下らないとでも取れれば私は救われるのだから。
アンタが好きなのは、演者の私なのか。それとも、中身の私なのか。



「ヒトメボレだな。」
「ふぅん。そ、う…―――― は?」



大嫌いな男から、一目惚れの一言。
大嫌い、大好き、大嫌い。

まだまだなまえの苦悩は続きそうだと思った瞬間だった。






ヒトメボレ。
(何で一目惚れとか…あり得ない!絶対あり得ない!)
(一目惚れに理由も何もないだろ?)
((うっ、ホントやりづらいわ。この人…。))