なんで、この問題を回避し続けてたのだろうか。
いずれぶち当たる問題だったのに。
「陽。紺炉の伴侶なんだってな?紺炉の抑制剤の交換は任せたからな。」
「‥‥‥‥‥エ。」
思えばこの一言が決まり手だったのだと思う。
紅のダンナにご指名されたのなら、やるしかないとは思ってた。
‥‥‥‥‥思っていたのだが、致命的な問題に直面した。
紺炉さんの腕の包帯は自ら行ってはいたが、どうしても個人だと難しいところがある。
それは、後ろ首から背中にかけてである。
いつもは他の隊員や紅のダンナが行っているのだが、お泊まり生活(いや、同居生活かもしれないが)になったならとこれからは私に任せることになったらしい。
まぁ、確かに私がやることにたいしては全く問題はない。問題はない。のだが‥‥‥。
紺炉さんの裸がみれません。この致命的な問題を除けば。
「……相模屋のダンナ………絶対に振り向かないでくださいね!」
「お、おう……。」
既に緊張感が声にすら伝わってしまっただろうが、私にも覚悟を決めなければならないことである。
将来を約束した殿方の世話もできないでいるわけにはいかない。
男性の上半身の裸は全く見たことはないわけではないが、彼に関しては状況が変わる。
ましてや片想い拗らせ中だったときから今まで見たことがないのだから、尚更である。
意を決し、まずは丁寧に包帯をほどき始める。
慎重に慌てずゆっくりとほどけば、見えてきたのは彼の素肌。
正直、卒倒しそうである。
「………陽?」
「だ、大丈夫です!振り向かないでくださいっ!」
少し声を張ってしまい、慌てて我に返って作業を始める。
これで振り向かれたりでもしたら、卒倒の仮定が確定事項に即変わる。
それほどまでに紺炉さんの背筋が背中だけでも十分すぎるほどだった。
ようやく包帯をほどき終えれば、次は抑制剤を張り替えて巻き直すだけ。
鍛え上げ、バランスよくついた筋肉に、少し影を落とす焦げた痕。
そこにそっと触れると愛しさを感じる。
大好きな町を、守ってくれた証。
軽く息をのみ、恐る恐る張り替える。
「…!」
「…っ、……痛かった、ですか?」
「いや、冷やっとしただけだ。」
そうですか、と安堵して告げてもう一度貼る。
この後包帯を巻くだけではあるが、ほどくのとは違って固定するためのものなので更に触れなければならない。
正直、今まで触れていたときは包帯越しだったために素肌に触れるだけでも顔の熱で焼けてしまいそうだった。
「陽?どうしたんだ。」
「!!だ、だだ、大丈夫です!」
「‥‥‥お前ェ、もしかして…。」
「ひゃう?!」
こちらを振り向きそうだったため、とっさの判断で目をつぶった。
だが今度は両頬を挟むように抑えられたのはすぐにわかった。
正直、目を開けるのがしんどい。
沈黙が続く。
「‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥陽。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ハイ。」
目をつぶってても、視線が痛い。
痛すぎて目を開けたくない。思わず言葉が片言になる。
「正直に答えろ。なんで目を瞑ってやがる。」
「‥‥‥‥相模屋さんのこと、ずっと好きだった、ので‥‥‥裸、とかも‥‥‥どうしても、意識、しちゃって‥‥‥‥‥見れなくて‥‥‥‥‥‥。」
我ながらもう自爆だよ、これ。
男所帯だから裸だって、全く見たことない訳じゃないのに。
でも、好意を寄せた相手では意味は違う。
意識レベルで変わる。
それほどに、恋をしてしまっていたから。
恋仲になったとはいえ、拗らせたツケが重い。
「だったら、尚更目を開けろ。
伴侶が夫の裸をみねェのは一大事だからな?」
「‥‥‥うぐぐぐぐ。」
ここまでいけば根比べなのだが、おそらく観念して目を開けるまでは解放されないだろう。
しばらく耐えていたが耐えきれず、ゆっくりと目を開く。
すると、やっと目を開けたかと笑いかける紺炉さんに不意打ちで唇を奪われる。
嫁ぐんだろ、覚悟を決めろ。とあなたは笑うけど。私は既に許容を超えてしまっていたのである
この後、案の定包帯を巻き終えるまで時間がかかりすぎて、からかわれたのは言うまでもない。
嫁の試練、選択せよ乙女
(ほら、さっさと続きやらねェと終わらないぜ?)
(‥‥‥相模屋のダンナ、楽しんでませんか?)
(こうも初々しい妻を見るとな?)
(!!!)