好き、と告げた。
愛してる、とも告げた。
あとは、何を告げればよいのだろう。
すっかり日が昇り、空が明るくなった頃。
不思議とよく眠れたためにゆるゆると目蓋が緩んではゆっくりと目を開ける。
視界はまだぼやけていた。
「‥‥‥‥‥‥ん、ふぁ‥‥。」
「起きたか?陽。」
「うん‥‥‥‥‥っ‥‥‥‥‥、ん?」
完全に寝入ってしまい、寝ぼけてはいたが聞き慣れた声に安堵してふにゃりと微笑む。
ふわっとした温もりを感じてゆっくり目を開けると‥‥‥‥紺炉さんの胸板に埋もれていた。
「っ!!‥‥‥‥‥‥‥‥オハヨウゴザイマス。」
あまりの状況になんでこうなったか聞きたくなったが、反射的に挨拶だけ交わす。
(状況がようやく把握してあまりにカタコトだけど。)
あなたは目を丸くしてたようだが、小さく笑っておはようさん、と返して頭を優しく撫でる。
必死になぜこうなったかを思い出す。
確か、家が吹っ飛んで、詰所に泊まることになって。
‥‥何故か紺炉さんの部屋で寝るようにいわれて、それで同じ布団で寝ることになって‥‥それで‥‥。
そこからの記憶はあやふやだ。
緊張のあまりに眠りが深かったのかもしれない。
(そうじゃないかもしれないが、どうだっただろうか‥‥。)
自室が飛ばされたのなら職場で寝泊まりでも問題はなかったのだが、そういう問題ではない、と紅のダンナはいっていた。
でも、ならばと着替えて私も仕事に行かなくては。
まだ時間は少し早い。
ならばと今だけ彼の温もりを感じてゆっくりしても良いだろうと思う。
くっと腕を伸ばせば、腕の中でホールドされたままだが彼が声をかける。
「陽。」
「はい。」
「今日も差し入れを頼む。」
「あ、はい。いつものやつですね。」
布団の中ではあるが早速注文がはいれば、早速腕を伸ばして手荷物のメモに書き記す。
となると、紅のダンナも手をつけるだろうからと、いつもの、と書き込んでメモを閉じる。
今日も忙しくなりそうだ、と微笑む。
もう恋人同士の仲睦まじい時間も終わりか、なんてぼんやり考える。
朝なんだしお互いやることは山積み。こればかりは仕方ない、と納得する。
「あとな‥‥‥。」
「?」
「そろそろ、祝言をあげる準備もしねェとな?」
「!」
優しく髪を撫でられて、かぁあっと熱が顔に集まりだす。
祝言をあげる、とは前々から言ってはいたが本当に夫婦になるときが近いのだと思うと嬉しさもあるが、こういうときの紺炉さんはとても意地悪だ。
そう言われれば、私が黙ると思っているのだから。
「っ、も、もう!相模屋のダンナは意地悪ですっ。」
「違ェだろ?陽。」
「こ、今度はなんですか‥‥。」
もう騙されまいと身構えると、ぐいっと寄せられては耳許に唇が当たる。
低く掠れた声で囁かれれば、脳に直に響く。
「今夜は可愛らしく名前で呼んでくれただろ?」
「!!!な、な、な、っ!!」
彼の言葉に顔に熱が一気に集まる。
大好きで、愛しい人ではあるのに、こうも意地悪されれば悪戯に心を揺り動かされてしまう。
それでも好きであることは自分の中でわかりきってるために、反論もできない。
もう迂闊に名字で呼べなくなってしまった、と墓穴を掘った自身をほんの少しだけ後悔した。
結局は惚れたら敗け
(紺炉さんのタラシ!そういえば黙るからって‥!)
(俺はずっとお前さんに首っ丈だけどな?)
(っ!!!も、もう‥‥!!!)