一緒に暮らすことは、とても嬉しいこと。
勿論仕事も一生懸命にこなしたい。
それもこれも、愛しい方の隣にいたいから。
「え、っと‥‥‥お邪魔、します。」
「悪ィな、陽。」
「い、いえ、私は別に構いませんが……、…相模屋さんのお部屋にお邪魔するのは‥‥。」
「俺ァ別に構わねェよ。」
『あと、相模屋さん、じゃねェだろ?』と笑みを浮かべると、ほのかに赤らめて小さく頷く。
本格的に引っ越しとなったために、自室に合ったものを最低限だけ引っ張る。
元々、時折しか戻らない部屋だったが寝泊まりする場所が変わったからだ。
ならばと最低限のものだけを手元に、あとは実家に預けるなりしてきた。
「‥‥これ、お前さんが前に着てたモンだろ?」
「‥!あ‥、はい‥‥。似合ってるって‥‥言ってくださったので‥。」
紺炉さんが前に、といってくれたのは手持ちの荷物に入っていた白いわんぴーす。
あれ以来、着てはいないけど一緒に暮らすからと言って荷物を引き取った。
実家に送ったところで着る機会がないわけだし、この服には思い出がある。
初めてこの服でばったりしたときは今でも覚えている。
すごく恥ずかしかったけど、とても嬉しかった。
「なァ、陽。」
「はい?」
「また着ちゃくれねぇか?」
「はい‥っ!今から着替えます。‥‥‥みないでくださいね?!」
見ないも何も、二人は恋仲で、もはや婚約まで果たしているというのに、まだ心の準備ができていない。
(酔った勢いとかで色々あったが、そのときの記憶はあやふやなので‥‥!)
それでも、わかったよ。といって背中を向けてくれるので、ほっと胸をなでおろす。
早く着替えてしまおうと着物の帯に手をかけて、ゆっくりと緩めては床に落とす。
続けてすとん、と肩から着物を落とすとどうしてもあの夜のことを思い出してしまうから恥ずかしくなる。
最初に着替えた時はそうでもなかったのに、矢張り一緒に過ごしている時間が段々と増えたからなのか。
見ないで、とはいったが彼がいる中で自ら衣類を脱ぐというのは恥じらいはどうしても芽生えてしまう。
恥ずかしさもあるが、うれしい気持ちになる。
そんなことを考えず、早く着替えてしまおう‥‥!
わんぴーすを手に取り、早速履いては腕を通し、あとは背中の‥‥。
「‥‥っ、ぁ‥れ‥‥?」
「どうした、陽。」
「あ、あの‥すみません‥‥。背中の、ちゃっく、引っ張って、くれませんか‥‥?」
流石に、背中だけだったらすぐに終わるからと内心を納得させて彼を呼ぶ。
そういうと、あなたがわかったと言って近づく。
まだ着替え途中とはいえ、背中は閉じるまでは晒された肌が見えてしまうのでどうしても恥じらいはあるが
こればかりはすぐに終わることだと繰り返し告げる。
すぐに、終わるんだ。
そのちゃっくと、もって、すぐにあげて‥‥‥。
「あァ、ここか?」
「あ、それです‥‥。それを、くっと上まで‥‥‥。」
真後ろに彼がいる。彼の吐息が少し近いのか当たる。
あぁああ、思考が段々恥じらいに変わってしまう。なにもやましいことなんて考えていない。
早く締めてほしい!そして少しだけ離れてほしい。
後ろから、それも背中を見られているだけで、熱がたまって仕方がない。
早く閉めてほしいのに、無言のままで視線だけ送られる。
うまくできないのかな、なんて思ったけど、そうじゃなかった。
「なァ、陽。」
「‥‥!はい、なんです‥‥か、」
「お前さんの背中は綺麗だな?」
「!!!」
また心が乱される。そうとわかっても反論も何もできない。
すっと、背中の背骨をなぞるように指でなぞられる。
それだけでも、ぞくぞくとした感覚に震える。
「ん‥‥ッ、!」
ちく、とした感覚がうなじに感じた。
何をしたかは流石に分かっては思わず反論しようとするも、ちゃっくを上げて一気に閉じる。
ちゃんと閉じ終えると、今度は後ろから腕が回って優しくもしっかり抱きしめられた。
身長差もあるためにすっぽりと埋まる形になってしまう。
「悪ィな、陽。」
「!も、もう‥‥っ!」
こうも言われていまえば、何もできなくなるのに‥!とわかった上でする。
振り回されているんだろうけど、彼曰く『ずっとお前しかみてねェ』と言われてしまってはどうすることもできない。
それほどお互いがお互いのことを好きでいるのは重々知ってはいる。
知ってはいるけど、こうして私の許容範囲を大きく超えてしまうことをされてしまう。
洋服は着るのは好きだけど、暫くは封印しておこう‥‥と、
内心思ってはぎゅっと抱き返した。
大好きだからこそ、時折困ることだってある
(‥私、だって‥‥紺炉さんのこと、ずっと大好きなんですよ‥。)
(俺ァ陽のことはずっと惚れている。)
(そうして、被せるの、ずるいですっ!)