変わらない日常に、たまに刺激が欲しくなることがある。
それが、些細なことでも。
仕事の合間にひょこっと、詰所に顔を覗かせる。
鼻唄混じりでごめんください、と暖簾を潜って笑いかける。
「ん?陽。お前さんが珍しいな。」
紺炉さんの声がすると、振り向いては首をかしげる。それもそのはず。
今の彼女はなにも隠そう、見慣れないものがある。
黒淵眼鏡である。
「そういえば、お見せするのは初めてでしたっけ。」
「あァ。お前さんは目は悪くなかったはずだろ?」
ハイ!両目とも1.0です!と手をあげてふにゃりと笑う。
そんな彼女が付けているのは、度の入っていない眼鏡である。
すくえあの黒淵眼鏡に指を掛けてはじっと見つめる。
「眼鏡って、今ではお洒落で付けるみたいですよ?」
えへへ、と嬉しげに笑う。
白い肌に小顔な彼女の顔に、存在感を主張する黒淵の眼鏡。
クリアな視界に少しちらつく黒。
少し違和感ではあるけど、慣れてしまうと反応が違うのをみると思わず楽しくなる。
そんな考えを見抜かれているのか、紺炉さんはじっと見つめられた。
(改めて見つめられると照れる‥‥。)
「んー‥。」
「!な、なんです、か‥‥?」
「いや、お前さんが眼鏡をするのも珍しくていいと思っただけだ。」
あ、笑った。
似合ってると思ってくれるなら、私も少し挑戦してみた甲斐はある。
つられて笑いかけると、何故か指先がこちらにのびる。
「だが、俺ァお前のそのままの顔がいい。」
「っ!!」
するり、と眼鏡のツルに手を掛けてはそっと外される。
ちらつくフレームはなくなって、綺麗に紺炉さんの顔が正面に写る。
‥‥‥今更だが、すごく、近い。
「!!ち、近‥‥っ!」
「そりゃお前さんの目の前だからな。」
そうくすりと笑って、腕を背中に回されてすかさず密着する。
腕のなかですっぽり収まるように閉じ込められてしまえば一気に熱が顔に集まる。
周りからは焚き付ける声はあれど止めてくれない。
「っ、ここで、口付けはダメですならね。」
「は、お前さんのいい顔は俺以外に見せるか。」
ぼそりと告げれば軽く笑っては、頭をぽんぽんと撫でる。
段々と距離が近くなってきたためか、然り気無くこうして独占欲を示されてしまえばどうするもできない。
意地悪、とぼそり言い返すと
夜は楽しみにしておけよ、と告げられた。
些細な日常にも刺激は必要である
(紺炉さんは眼鏡似合いそうですよねー‥‥えいっ。)
(!何してんだ、陽。)
(ーーー!どうしよう、予想以上に(インテリヤクz‥‥)似合う‥‥!)
(なんか言ったか?)
(なな、なにもーー!!)