愚者は事の顛末を思い知る

退屈しのぎに何かしたかっただけであって、深い理由はない。
ええ、本当に深い理由はなくて。



秘密基地でぐでっと椅子にもたれ掛かって『退屈。』とひとりごちる。
元々死人扱いされてたとはいえ、そんなにホイホイと出るものじゃないと苦言を呈されたため大人しくはしていた‥‥だが。

それもいってこのまま大人しくするのも退屈すぎてしかたがない。
いや、苦言を呈された理由も流石にそれは知ってはいるけど刺激は欲しい。
死人扱いであって、死人ではない。
自由に焦がれていたとはいえ、ままならないことだってあるのだ。

そんな中、黒い男・ジョーカーはひとつ提案をする。
元・同郷のよしみで、同じ脱走者。



「なぁ、リン。ゲームでもしねぇか?」
「コロシアイですか。」

「違ェよ。」



くつくつと笑う彼に、いつまでたっても警戒心が解けないといったらありゃしない。
ドンパチしたところで楽しませるだけだってのはわかる。

そんな私をさておいて、コイツだといって渡してきたのは至って普通のトランプカードだった。
確か、カードってアンタの得物ですよね?
いや、カードの時点で嫌な予感しかしないんだけども。



「‥‥急に襲ったりしませんよね?」
「お望みならやってやるけど?」

「そんなの嫌です。」



言葉の応酬はいつものこと。
かといって、このまま好き勝手にされてしまえば己自身の命どころか、貞操の危機を感じるのでそこばかりはちゃんと否定する。

外に出たいとは言った。それを了承したうえで一緒にいる。そこまでは、別に問題はない。
ただ戦闘はできるけど、本気で勝てるかどうかは知らない。
彼は本気をだしてない、って何となくわかる。
そうとわかってるから、互いに実力行使をしないのだ。

お望み通りの殺し合いができるなら、当にやっているしどちらかは屍と化している。
その屍が例え、ボク自身であっても。


あからさまに警戒をしたためか、ニヤニヤとジョーカーら笑みを浮かべてはパラパラと適当にカードを切った。
私の手元に数枚のカードが並べられる。



「普通に遊ぶだけだ。お前を襲うならとっくにしている。」
「‥‥そうですか。‥‥で、本当の狙いは?」
「ただの気晴らしだよ。リンとゲームをしたいだけだ。」



おなじのことを再度告げる。
これ以上言葉のやり取りをしたところで無駄だろう。
そうとわかると、軽くため息を付いた。

勿論、乗るには乗るが牽制も忘れずに。



「‥‥変なことしたらぶっ飛ばすけどそれでもいい?」
「そりゃおっかねェな。リン。」



こんなのは軽い憎まれ口だ。
そうとわかっているから、ジョーカーはニヤリと笑みを浮かべた。

ここは素直に提案を受けてみるのも一興かも、と自身に言い聞かせて。



「まぁ、そうだな。お前が勝てばなにもしねェよ。」
「‥‥言ったな?」



カードゲームって地上に出てから初めて知ったものだが、イカサマをしようものならすぐに見極められるだろう。

些細な動きも見逃さずに今までやってこれていた。それで生きていたのだから。
手元で怪しければすぐに見極められるとたかを括る。



「なら、やってやろうじゃないの。」
「お手並み拝見だな?」



だが、たかを括ったことを激しく後悔する。
その安易な提案をなんの疑問も疑念もなく、受けたことを。
それが罠だって知ったときには、既に手遅れであったことも。





愚者は事の顛末を思い知る
(!!そんな、馬鹿な‥‥。イカサマしたんじゃないでしょうね!)
(俺はお前が勝てばなにもしねェとはいったが、おいそれとそうさせると思ったのか?)