過ごす時間が共通すれば、無意識にも似通うところだってある。
なんてこともない何事もない日常。
それでも、前々から気になっていたことがある。
「あの‥‥今更なことを聞くんだけどさ。」
「なんだ?リン。」
ふぅ、とタバコの煙がフワリと宙を舞うと、軽く手で払う。
ケムイのにといってもニヤニヤと面白がるからもう諦めてはいる。
「‥‥最初出会った時のはそうでもなかったんだけどさ、その私服って‥‥何。」
「俺にとって闇は庭だからな?」
「いや、それはボクもそうだから。‥‥いや、そうじゃなくて。」
どちらも闇の住人なんですけど。
ボクだって、元々あんたと同じ古巣の人間です。
いや、それはどうでもよい話であって。
この話題にあげたのは男の私服について。
最初に地下で大暴れしたときはシャツにベストとキメていると言ってもいい。
そういった服装だったが、今は大変カジュアルである。
別にセンスがどうも‥とかではない。
ただこの生活になってから、ボク自身の服の調達をしていないのだ。
外にはたまにしか出てないからジョーカーの服を借りている。
だが、流石にそれは‥‥。
「流石にあんたの服を借りてばっかりだと不便。」
「おいおい、借りておいてそれかよ。」
「だってどれもおっきいから‥‥。」
そもそもこの男との体格差も身長差もあってどれを着ても借りてきたと言わんばかりに大きすぎるのだ。
ぷらんと腕に対して余った布が踊る。
自身の服は抜け出したときにインナーとして着てた服しかない。
何日も連続はいただけないので借りてはいるが、流石に借り続けるのは少し申し訳ない。
だから、この機会に買いにいきたいと申し出た。
「俺からすりゃ役得だけどな?」
「だから買いだししたいんですけど!」
だから外出しますね!と告げて基地を出た。
彼シャツだとか前に呟いていたのを忘れない。
最初はただの親切心かと思いたかったが、下心が判明したのなら対策の必要があると判断した。
一応生活するための資金はあるし、買い出しくらいは問題はない。
問題はない、ないのだが‥‥少し困ったことがある。
人気のないところから街中に繰り出して、あとは何店舗か店を回ろうとしたことである。
足音が後ろから聞こえる。気がする。
「‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥ねぇ。」
「あ?」
足跡が後ろから聞こえる。1人分の足音の正体は言うまでもない。
くるりと振り向くと、案の定の男の姿があった。
なんでこうして平然といられるのだろうか。
「なんで付いてきてんの?」
「別にいいだろ?」
あんた、手配されてるんでしょ。というも、余裕綽々である。
いや、手配されてたのを見つけたところでのらりくらりとかわしていくんだろうけど。
なんなら、一発くらい危機的なことさせてやろかと思うがたぶん効かないので半分諦める。
たぶん付いてくんなと言っても訊かない。ジョーカーは、そういう男。
さっさと買い物済ませてしまおうと、再度歩を進めようとしたとき後ろから声がする。
「‥‥思ったんだが。」
「?」
「今の俺たち格好‥‥ペアルックみたいだな?」
「‥‥は?」
まさかの言葉に思考が固まる。
今、なんていった?この男は。
改めて言われてみれば、黒のだぼっとしたトレーナーに大きめのサルエルパンツ。
彼もまた似たような服装のため、パット見た感じは恋人のそれと勘違いするだろう。
お互いの服装をみて、事の状況をようやく理解する。
カッと顔が赤くなるが、男は相変わらずニヤニヤと笑っていた。
そりゃ借りている男の服装だから似たような姿になるのも仕方ないだろう。
だが、この男から『ペアルック』との名称が飛んできたことに急に恥ずかしくなった。
この後、ジョーカーと差別化をするために何着か服を購入しました。
(もう絶対借りるもんか‥‥!!)
似た者同士は時に好みの物まで似通う
(俺と似たようなモンを買えばよかったじゃねェか。)
(買うかバカ!)
(まァ、借りてェならいつでも歓迎だけどな?)
(お断りします!!)