燦々と晴れる空。
それにじわり寄る、灰色の雲。
訳ありでしばらく一緒に住むことになることになった。
青年の名前は"52"。
ふぁいぶつー、と名前として呼称するには中々馴染みがないその彼は、大変聡明で、大変いい子であった。
『俺のことは気にしなくていい』とは言ったものの、恐らく未成年であろう彼を放っておくことなんてできない。
その結果、私自身の部屋で過ごすこととなったわけだ。
独り暮らしの部屋なのでそんなに小綺麗にしているわけではないが、来客用の布団を別に一式用意してたのは助かる。
流石に置いておくと言っておいてソファで寝かせるのはとても気が引けたし、
逆に私自身がソファで寝るとなっては後々後悔するだろうと思ったから。
彼と同じ部屋で過ごすことになって、幾日にちが経過した頃。
晴々と晴れていた雲行きが少し怪しさをみせる。
綺麗な青空が段々と灰色の雲に覆われる。
そうとは気つかずに夢中に本を読みふけっていたが、外部からふと声がする。
「‥なぁ、リン。」
「ん?どうしたの‥?」
「‥‥‥‥雨。」
「雨?‥っ‥ちょ!手伝って!」
ぽつ、ぽつ、と地面を叩く雨音が耳にはいる。
声をかけてくれた瞬間にぽつぽつとアスファルトを強めに叩く音が聞こえたかと思えば、いきなりどしゃ降りとなる。
幸い早めに気付いてくれた青年のお陰で全滅は免れた。
(あんなにいい天気だったのにこんちくしょう。)
ぽいぽい、と急いで洗濯物を取り込んでは部屋に放り込んだ。
ここ最近天気が恵まれなかったからたくさん干していたのが、まさか大急ぎ労働になるとは思いもしなかった。
「これで全部か?」
「あ、うん。これで全部。助かったよ。」
一応訳ありで暮らしているとは言え、本当にいい子だから涙でそうだよ。
奇跡的にどしゃ降りオジャンを免れた選択は乾き具合をみつつ洗濯物を畳んでしまう。
どれもこれも、問題はなくちゃんと乾いていた。
安心しきったら、救われた洗濯のお礼をしたい。
ちょっと出掛けるには早いが、ご飯ならいいだろう。
「じゃあ、晩御飯に好きなもの作ろうか。」
「本当か?」
「勿論!今から‥と言いたいところだけど、この雨じゃ流石にすぐは厳しいかな‥。」
ちらり、と窓を覗くがやはり勢いは未だに衰えない。
せめて、勢いが弱まったら買い出しに行こう。
好きなものでも、食べたいものでもなんでもいい。
あ、でも手が込むやつだったら検討かな。
そんなことをふと考えてると、彼はこちらに視線を再び合わせた。
相変わらずの紫水晶の瞳は綺麗だな、なんて考えてきた。
「なぁ。リン。」
「ん?な、に‥‥‥?」
「じゃあ、あんたが欲しい。」
「‥‥‥‥‥ん?」
長い沈黙をしたものの、相手の言葉に途中で首をかしげた。
今、なんて?
疲れすぎて幻聴でも聞こえてしまったのか?
思わず聞き返そうとしたが年下の少し済ました青年は、綺麗な紫水晶の瞳でじっとこちらをみてきた。
冗談でいったのではないと、すぐに理解する。
(それでも、じゃあ、とはなんぞ。じゃあ、とは。)
だが、すぐにその答えは出せるはずもなく。ただただ困惑する。
雨は、まだ止みそうにはなかった。
君のためのすべてでありたいと願うなら
(うーーーーん‥‥‥流石に、子供に手を出すのは犯罪では‥。)
(俺は子供じゃない。なら判らせた方がいいか?)
(ストップストップ!まだその関係には早いから!)