綺麗な関係が終わってしまったとしても構わない。
それは本音ではあるけども、まだ少し先のこと。
只今リンは、大変睡魔に襲われていた。
それもそのはず、昨日までの残業のツケが、丁度来ているからだ。
幸い休みでもあるため、仮眠を取ることにする。
ちらりと時計をみてもまだ昼をすぎた頃。
十五分、三十分だけなら夜も問題なく眠りにつくだろう。
そう判断してソファに転がって仮眠をとることにした。
*
リンが眠って数十分後。ガチャ、と静かに扉が開く。
眼帯をした紫水晶の瞳を持つ青年。
戸を開けたのもここの部屋の主を探すためである。
「なぁ、リン‥‥。」
ふと、彼女がいるであろうリビングに顔を出すとソファに横になって眠っていた。
手元には読みかけであろう本を持っていて、当の本人は寝息についていた。
そういや、ここ最近忙しそうだったのを思い出す。
仕事の繁忙期、といっていただろうか。
立て込んでたなかでようやく休みを取れた訳なので、寝かせておくかと近寄っては髪を撫でる。
ん、と小さく息を漏らしながらも安心したように微笑む。
こうしていると、年上の彼女ではあるがどこか幼く見える。
「リン‥‥。」
ぽつりと名前を呼んでも彼女は目を覚まさない。
心地よく眠っているようで時折息を漏らすだけだった。
眠っているのを妨害するのはよくない。
それはわかりきってはいる。わかってはいるのだが、先日の告げたことから確実に彼女の存在が変わっている。
はぁ。と軽いため息をつく。
彼女からすればまだまだ子供のような扱いであろう。
それでも、青年はれっきとした男であることを知らしめる必要があると理解する。
そっと柔らかな髪に触れてははらりと指先に絡める。
ぽつりと、呟いて見下ろした。
「あんたが、いけないんだからな?」
目の前で、あんたがこんなに無防備な姿をするからいけないんだ。
そう自身に言い聞かせて、そっとソファの上に眠るリンを押し倒す。
頬に触れれば、雪のように白い肌がとても柔らかくて仄かにいい香りがする。
その香りに吸い込まれるように顔を近づける。
ほのかな香りがとても心地よく、自然と少し厚めの艶めいた唇に視線が向く。
口付けをしたい。と衝動的に駆られた。
寝込みを襲うなんてわかったら、怒られるだろうか。それとも失望するだろうか。
その危機感を薄く感じるが、今は衝動に身を置くことにする。
少しずつ距離が縮み、あと数センチで、触れあう。
こうなってしまえば、最後まで。
「‥‥‥ん‥‥‥っ‥‥?」
意を決していたとき、慎ましく閉じていた目がぱちりっと開く。
暫く眠っていたために、意識を段々と覚醒させるとぼんやりと視界が取り戻す。
すると、目の前には天井‥‥‥の前に、"52"がいた。
なんで、ここにいるんだろうと考えていたがそれよりも驚きで目を見開く。
「!!!」
「起きたのか。」
なんであなたはそんなに冷静になってるの。
言いたいことはあったが、寝起きのためか全く理解が追い付かない。
そんなに中でも紫水晶の瞳は相変わらず綺麗だ。
片目は眼帯で覆われてはいるが、吸い込まれてしまいそうだった。
優しく頬を撫でたかと思いきや、青年は一言だけ残した。
「あんたが、いけないんだからな?」
優しく触れる唇。それとともに、なにかが壊れる音がした。
ヒビがはいったものが確定するのは、もう少し先の話。
精巧な硝子細工にヒビをいれたなら
(っ!だ、だから!こういうのはダメだって!)
(俺が大人になればキスは許してくれるのか?)
(うっ‥‥そ、そういうことじゃなくて、)