月夜の夜風に想いを募らせて

季節の変わり目頃。
この時期になると、燦燦としていた太陽の光が段々柔らかいものに落ち着いていく。

ふわりと浅草の月夜がとても綺麗に輝いている。
見上げていると、紺炉さんからそっと抱き寄せられて告げられる。

その言葉には、そのまま受け取っては思ったことで返事した。



「月が綺麗だな?」
「?‥‥そうですね。紺炉さんと一緒に見られて嬉しいです。」



なんで、この時こういったのだろうか。この時は知らなかった。


紺炉さんがあの時、言った言葉の意味を知らなくて。つまり、正解も知らなかった。
そのために思ったことを無意識で言ってしまったことに、後々知ったときは火が出る思いだった。

あなたを愛している、まさに愛の言葉だってことを知らなくて、思ったことをいっただけだった。
幸い返した言葉は間違ってはなかったけど、こういう時に定番の返答があるのだと。


もし同じことを言われたら、とは思ったがおそらく言わないだろう。
紺炉さんの遊び心に気づかなかった私も私だが、それよりも自身の教養のなさに少し自信をなくした。

ちゃんと、釣り合う女にならなくてはと決心した。



 *



それから、数日が経過する。

ここ最近は天候が安定して夜でも心地よかったが、季節の変わり目からか、ひゅうと吹く風がひんやりとしていた。
いつも動いていると気にはしていないが、今日はやけに肌寒いと感じた。

風邪をひかないようにしなくては、と思って歩いていると、紺炉さんはふと呟いた。



「今日は寒ィな。」



その呟いた言葉に反応して見上げては仄かに顔を赤らめる。
おずおずと見上げて、あなたに伝えた



「‥‥‥あ、あの‥‥。」
「ん?なんだ。陽。」

「‥‥‥ぬくもりを、分けてくれませんか?」



ぽつりとか細い声で返答する。
月が綺麗ですね、の際に意味を知らなくて答えられなかったのがきっかけではあった。

実は熱烈な告白を受けてはこっそり勉強をした。
言葉の真意を知るには、教養を詰まなくてはと勉学に励んだ。


すると、紺炉さんはフッと笑って腕を引き寄せては抱き締める。
小柄な私では、大柄な彼に抱き締められたらすっぽりと覆う程だ。

一気に鼓動が鳴ってきて少し喧しい。
心臓の鼓動が収まって欲しいけど、そんなことはなかった。

ぽんぽん、と優しく背中を撫でる。
愛しい愛しい人に触れられているとわかると、嬉しくてしかたがない。



「‥にしても、陽。よく知ってたな?」
「そ、その‥‥‥‥教えて、いただいたんです‥。」



以前にしてしまった失敗をもうしたくなくて、私なりに調べた。

その時に、もしこの言葉を言われたらこう返すようにと告げられて。
少しでもあなたに近づきたくて、私なりの精一杯を伝えた。


そんな私の浅はかな思考を読み取ったのか、優しく後頭部に大きな手のひらで撫でてきた。
おずおずと見上げると、紺炉さんは優しく微笑む。



「お前さんは背伸びなんざしなくても、気持ちは十分に伝わってるからな。」



より力強く、ぬくもりを分けてもらう。
本当にこういうときはズルい人だってつくづく思う。

優しくすっぽりと包まれる感覚がとても心地よい。
心臓の鼓動がとてもうるさいのに、それをもどこか心地よかった。

今日も月の夜風は、とても心地よくて安心できるものだった。

愛してる、と耳元で優しく告げられては一気に顔の熱が集まる感覚がした。
ああ、一生この愛しい方には勝てないと自覚した。





月夜の夜風に想いを募らせて
(お前さんが俺のために知ろうとしたのは、嬉しいモンだな?)
(!!こ、紺炉さん‥‥っ!!)