居候生活を勝手にされては、数日が経つ。
そう、自分を“ランサー”と名乗ったあの男のことだ。
ふとひとつ、質問があった。
だって、大事なことだったから。
「……で。ランサー…って、呼んでいいのかしら…?」
「あ?どうしたよ、いきなり。」
唐突な事を言われてこの男は困っただろう。
しかし、私がひとりごちったことでその理由を話した。
「だって、私が言う“ランサー”は別の人でいるもの。
だから…どう、呼んで、いいのか…。」
そう。私が思う“ランサー”だとケイネス先生の元にいるランサーのことになる。
(そうそう!あの優しい騎士様のことなの!)
「あー…、じゃあ俺の名前でも呼んだらいいだろ?」
「そ、そうか。あくまでクラス名だから、アンタ自身の名前があるんだよね。」
そういや、そんなことも言峰綺礼が言ってたっけな。
英霊として呼ぶサーヴァントたちは、生前だった頃の名前があって。
それを“真名”と呼ぶって。
「じゃあ…アンタの名前を教えてよ。」
「なァ、お嬢ちゃん。」
名前を教えてもらおうとしたのに、何故か呼ぶ私。
急にどうかしたのかなんて思って、結局私の話の腰を折って訊いてしまった。
「……なによ?」
「俺とお嬢ちゃんの間には、マスターとサーヴァントの関係はねぇよな?」
「……え?あ…、まぁ…そう、…だね。令呪まだこんなだし…。」
「そうだろ?そのままじゃ令呪の役割は果たせねぇ。」
うん。それは判ってる。
初めてランサーに出会ってからも令呪は依然と薄いままだ。
それなのに、何故アンタがここにいるのか。
マスターでもないのに、何で…?
「だが不思議な事に、俺がこうやって現界してんのは…。」
嬢ちゃんの魔力だぜ?」
「は…っ?!う、そ…でしょ…?」
私は目を疑った。
だって、喚んだわけでもないのに、何故彼が私の魔力で活動できているのか説明できないからだ。
「嘘も何も、俺が現界してんのは、お嬢ちゃんの魔力でここに留まっている。
喚んだわけじゃねぇのにな?」
「そ、そうだよっ!私…何回も命の危機感じてたり話したりする以外、何にもしてないもの。」
ランサーは指をスッと私の唇に当ててニヤリと笑みを浮かべていた。
だって、魔術師の端くれなのは自覚してたけどランサーの現界に私が関わっていたなんて思ってなかったから。
それに召喚に必要なことを何にもしてないのに、気付いたら居たという事実を誰が信じるか。
いや、信じたくないって言ってるけど、目の前でこうやって会話してる時点で信じざるを得ないんだけど!
…なんか、頭痛くなってきた。
「…まァ、面倒な説明はさておいて…。」
「………?」
ぎしり、とソファに座って居た私の隣に座ってはすすっと、近づいてきた。
いや、何で一緒に座ったの?何で、…なんで?
「わかってんだろ?俺はお嬢ちゃんに会ってから、ずっと現界してんだぜ?」
「……で?」
「俺が現界するには魔力を消費する、…で、俺は既に底を尽きかけて消滅寸前だ。
つまり、お嬢ちゃんが魔力供給するためのパスを繋がなきゃならねぇんだよ。」
「…つまり?」
え?え?それって…何が言いたいの?
結論を求めると、はぁとため息をついてはトンとそのまま押されてどさりとソファに押し倒された。
ソファに更に重さがのっかかって、天井とランサーの姿が見える。
…はっ?!え、な、何…?!
状況一転。
彼の赤い瞳がまるで獣のようなギラリとしたものを感じて…。いやな予感がした。
いや、嘘であって欲しかった。
「腹が減った。悪ィが俺に喰われろ。」
「はぁっ?!く、喰われろって何?!ちょ、だ、ダメだからぁあああ!!」
ああ、前で散々嘆いていた私を殴りたいです。
今、色んな意味で危険です。本当に嘘であって欲しかったわ!!
本題、そっちのけ
(いやぁああっ!な、なんでこの手段でいくのよっ!)
(仕方ねぇだろ、このままだと俺が消滅ちまう。素直に喰われりゃ気持ちよくしてやるぜ?)
(絶対イヤだっ!普通に魔力あげるからぁああ!!)