居候、一名様ご案内

私の存在は、私の能力は。
私に関する事象が変わるだけだと思っていたんだけど。

どうやら、それだけじゃないらしい。
まさか。誰がこんなことを想像したのか。



「えっと……、アンタはどちら様?」
「アンタって会って早々な…、まぁ。いいだろ。
俺はランサーだが?」


青い綺麗な長髪を、後ろにひとつ結っている。
青の髪を反転するような、鮮やかな赤の瞳。
青で統一された武装で、浮世離れした姿をしたこの人物は、このセカイの人物ではないと一目で判った。

あれ。私はその名前に覚えがある。
だけど、違うぞ…?だって、私の知ってるその名前は…。



「で、でも…!私の知ってるランサーと違うの。」
「あー、そりゃランサーってのはクラス名だからな。
俺の他にいるのは当たり前だろ?」



あ、そんなことを確か言峰綺礼から聞いたわ。
本来魔術師は七人で、使い魔・サーヴァントも七騎。

クラス名は確か…。
セイバー、アーチャー、ライダー、バーサーカー、キャスター、アサシン。
そして、ランサー。


しかし、おかしいことがある。本来ならクラスの人物はひとりずつの、ハズだ。

私の記憶が間違えてなかったら、確かケイネス先生のところにランサーが居たはずだ。
(そう!あの心優しくて、イケメンなあの騎士様!)

なのに、目の前の男は自分をランサーと名乗った。
見た目が全く違うから…別人?


「で…、でも…。私の知ってるランサーはなんというか…その…。
物腰が柔らかくて、低姿勢で…。アンタとは、その…。」



言葉が出ずに、どもってしまった。
いや、なんていえばいいんだろう。なんか言葉が少々乱暴になりそうだ。

でも、ほぼ初対面の相手に思った事をズバズバいうのは失礼だし…。



「言いたい事があんなら言えよ。」
「うん。じゃあ言うよ。……違う。全然違う。
さっぱりで、奔放的で。荒々しいイメージ。」
「ほう…?」


こんなにバッサリ言っていいのだろうか。
でも、言いたい事があるなら言えといったのは彼だ。

言い過ぎかもしれないが、思ったことを素直に言ったのだがそれでいいでしょう。



「でも…、なんか気が合いそう。サバサバしてるからお酒でも交えたら楽しそうだわ。」

「お嬢ちゃんからのお誘いなんて光栄だね。」
「…ホントにそう思ってる?言っておくけど、私。強いから。」



あれ?なんでこんなところで意気投合?
いやいやいや。彼は英霊だぞ?サーヴァントだよ?

お酒で勝負したら負けるに決まってんじゃん!なんか強そうだし。
(泥酔しないようには気をつけよう…本当に。)


そして、ふと。気づく。
このランサーのマスターは…誰だ?そして…何故、私の元にいる?
私の元にいたのなら…私のサーヴァント……?

そ、それなら…私の令呪は薄い色からちゃんと出てるはず…。
慌てて自分の薄い手の甲を見たが……ん?あれ…?
…令呪、出てない……。

訳がわからない。

しかし、どうやら。彼は、居候でもするようで。
だって、普通に居座ってるもん!

令呪の色が出ていないのに、何故か普通に居座ってる。
もしかして、これ。

住人がひとり増えました。





居候、一名様ご案内
(そういえば、…アンタのマスターは?)
(あ?マスターはお嬢ちゃんじゃねぇのか?)
(だって…令呪、薄いままなんだけど…。)
(どれだ?)