彼から言わせれば、唐突だっただろう。
えぇ、そりゃ唐突だったもの!
『適材適所』と言う言葉がある。
人の不慣れなことは手を出そうとせず、慣れてるものに任せている方が色々効率がいいというものだ。
私は、ただの凡人マスター。ある時は最弱なんて言われたこともあった。
(いや、周りがすごすぎるから平々凡々が本当に底辺に見えるだけだ)
でも…少しはかじっておくことは悪ではない。
無知のままでも知っておくことは罪ではない。
…と言うわけで。
「唐突にですが、戦う方法を教えてください!」
「……柊。何故オレにそんなことを訊く。」
本当に、唐突だった。
そんな様子もフラグも立ててない中で、私から申し出たのだ。
しかも、相手は…ユリウスだ。
「だって、ひとりだけでもサクラ迷宮入れましたよね?」
「オレよりも購買部の店員の方が早いと思うが?」
「えぇ、先程お願いしましたが断られました。」
『なんでも営業時間外には仕事したくないようで。』とバッサリいかれた。
そうなると多少かじるにせよ、あのはくのんと何度も対峙したと言うから興味は尽きない。
…それに、本当によくアリーナでひとりで歩き回れるよねって思えるんだ。
私なんかいったら数秒で帰ってこれなくなるのに。
こういう時は押せばいいんだ、きっと。
今までごり押しだった部分もあったし…大丈夫だ、きっと。
「……断る。」
「…………………。」
「………………………おい。」
「はい?」
『はい、じゃない』と言わんばかりに眉間にしわを寄せては不機嫌そうな顔。
というより、こっちを見るなとばかりに鋭い視線だ。
「あまりこっちを見るな。」
「オッケー出すまでやめません。たまにでいいので!ちょこっとだけ…暇な時でいいので!!」
もはやごり押しだ。だが構わない。
これが私、柊玲奈なんだから。
それになんやかんや言ってユリウスは優しいんだ。
前にはくのんが『もうちょっと暖かく出迎えて貰えないか』と要望を出したら翌日には彼なりの暖かい出迎えをしてくれたと聞いた。
(まぁ、柄じゃないとか言われてその場で終わったけど)
よく雑務をこなしたり、ガトーが迷宮に迷い込んだ時でもあんなことを言っておきながらちゃんと迎えに行ってくれたりするし。
そんなアナタならこんな真剣にお願いする私をむげに出来るはずがない!
(いや、しないで欲しい!切実に!!)
「……お前も岸波に似て往生際が悪いな。」
「えぇ、自覚はしてます。」
「……………はぁ。仕方ないな。」
なんだその盛大なため息は。そんでもって残念そうな顔をするな!
そんで、イエスなの?ノーなの?
(いやいや、ノーなんて選択肢は私はへし折るけどね!)
「オレもそう暇ではない。余りに無様を晒すなら止めるからな。」
そういってくるりと静かに翻す。
静かに歩く後姿は鋭さとは別に、彼なりの不器用な優しさを感じ取れた気がした。
不器用な優しさ
(…だが、あの店員に言ったのか。)
(うん。……って、なんでそんな不機嫌な顔してるの?)
(………お前が気にすることではない。)
((あぁ、そっか……。一旦止めたんだっけ。))