目を覚ますと、居たのは見慣れた景色。
見慣れた天井に、見慣れた家具たち。
そして、沈黙を相打つように時計の秒針がカチカチと告げていた。
柊玲奈。それはこの目覚めた者の名前。
至って普通の青年である。至って普通の性格で、至って普通の学歴をもつ。
だけども。至って普通でないことが二つある。
ひとつは、魔術師の血を持つということ。
あとひとつは、シュレーディンガーであることだ。
シュレーディンガーは量力学の実験名である云々があるが、
言ってしまえば“真反対の事象が等しく存在する”“どこにでもいて、どこにでもいない”や“逆説(パラドックス)”など挙げられる。
彼女の能力は後に語ることにするが、今ここにいる柊玲奈は、存在するはずなのに、認識をされない者。
またその逆で認識はされるが、存在しない者と思っていただいていいだろう。
そんな彼女が『ふぁ…。』と欠伸をしてはぽりぽりと後ろ髪を掻く。
ぼやけた視界でなんとなく目を手に向けると、なかったものが薄らと浮き出ていた。
「なに、コレ…?」
謎の痣を気にすると同時にズキン、と頭痛が痛む。
その痛みの閃光に、ちらりちらりと光景が焼けつく。
やはり、ちらつくのは夢に見た光景で。
その舞台の中心に私が居て――――。
意味がわからない。わからない。
だけど、夢に居た私は手の甲と同じ痣が存在した。
違かったのは、痣は薄らではなくて、ちゃんと赤い色をしていたということ。
「コレ…夢の私と同じものだった…。」
自覚もなく心当たりもないけれど。
強いて上げるなら、普段は普通の人間として生きてたかもしれないが自分が魔術師の血を持つことなのか。
そして、夢の中で幾つか引っかかるワードを残して。
「“聖杯戦争”に…“マスターとサーヴァント”…殺し合い。」
口にするだけで恐ろしいと直感した。
手に宿る印は紛れもなく、使い魔・サーヴァントを従えるマスターの証。
それなのに、何故こんなに薄らとしているのだろうか。
何故私の手の甲に現れたのか。
謎や疑問は溢れるばかりだが、気にすることをやめた。
いきなり言われて、それもいきなり生き残りをかけた戦いなんて。
どう考えても異常だとわかるからだ。
夢だ、夢。と思って二度寝を決行。
だけど、この夢だと信じたかった現象は、後に現実のものだと思い知ることになった。
シュレーディンガーの猫 2/3
(認識することもしないことも入り混じる少女の行く末)