悪夢の再会。
今の私の状況を一言で表現するなら、それがピッタリだろう。
今の私は、サーヴァントという使い魔がいないマスターだ。
そして、サーヴァントを持たないマスターは、弱小ととらえても何ら変わりはない。
だから、こうして教会に保護を求めて貰おうとしたのだ。
なのに、なんだこの胸騒ぎ。
なのに、なんだこの悪寒は。
扉を開けた瞬間、それは現実となった。
「…ん?お前は確かあの時…。」
「え…?ちょっ!あぁああ、アンタは…ッ!」
声をかけられたので振り返ったら、見覚えのあるカソック姿。
茶寄りの短髪。そして、聖職者なのになにも感じない…だけど怖い。
…………。
……思い出したくない、思い出しちゃダメー!
思い出すな、柊玲奈。
私が記憶が途切れて、しかも激痛を味わう羽目になってしまったのは2,3回。
そのうちの…1回は……。
いやいやいや、そんなことない。
なんかやけに“この聖職者と関わっちゃいけないオーラ”が充満してるし、
それになんでこの人は目が死んでるの?とか。
色々あるけど、そんなことない。
…と思いたかった。
というか、思い出したくなかった。
「あの時、確かに心臓を潰したはずだが?」
「嫌だぁあああ!やっぱりアンタだ ったかぁああああ!!」
ああぁあ思い出したくなったよチクショウ!
なんでそんな物騒なことさらっと言えるんだよ悪魔かアンタは…!!
ああ、そうだ。すべて夢だこれは。
夢なんだ、忘れよう。というか見なかった事にしよう。
(うん、そうしよう。)
「心臓を破壊しても死なない女か…なら次は、」
「ちょちょ、ちょっと待って!私戦うつもりないし!戦争なんて参加するつもりないから!」
また殺されるのか!しかもちらっと聞こえたよ。
(次ってなんだ、次って!想像なんてしたくないからね!というか誰がするか!)
まだこっちに向けられた殺意に怯えてしまう。
だが、ここで負けたらまた死ぬ。
(あんな痛いのはもうごめんだ!)
ゴリ押し上等。更に押すように、自分のぼやけた令呪を見せた。
「そ、それに…!私 サーヴァントいないし!令呪だってハッキリ出てないんだから!」
流石に必死に訴える姿を見たからなのかハッキリと示すと、この男は構えを一旦解いた。
そして今度はまじまじと微動だに眉ひとつ動かさずにこっちを見てきた。
(あ、あの…そんな死んでいる目で見られるとすごく怖いのですが…)
何を言われるか、緊張感が一気に走った。
「女、名前は?」
「へ…?……あ、あぁ。柊 玲奈。」
「玲奈か……ひとつ問おう。貴様は何故聖杯戦争に参加する?」
何故参加するか。と訊かれたが、それは私にとっては返すのに困った質問である。
「と言われても…私、夢を見たこと以外、ついこの間まで一般人の一人だったのですが…。」
「夢……?」
「うん、夢。」
小さく頷いて私は答えた。
余り話すとなんか地雷踏みそうだったから、断片的に覚えている物をあげる。
戦場の真っ只中。特有の熱と死の臭い。悲鳴や雄雄しき叫び声。そして…私。
その私は、こんな薄っすらじゃなくて、ハッキリと真紅の紋章を記していた。
「令呪を持ちながらも参加の資格を持たないマスター…か…。」
ひとり呟く目の前の男。
(あれ?名前…そういえば、訊いてなかったな…。)
ふと思った私は、カソック姿の男の方を見つめた。
「あ、あの…!そういえば、アナタの名前、訊いてなかったんだけど。」
そういって、私は。
この男・言峰綺礼と二度目の邂逅だった。
再会 -case:言峰綺礼-
(言峰、綺礼か…なんか…その……。)
(?どうかしたか?)
(い。いやっ、なんでもない…。)