レンアイ・コード
此処のロビーって、本当に休み時間だと人が多い。
だけど、個人的には放課後の少し静かな空間が好みだ。
「自分、何してるん?」
「……今吉先輩。」
ひょいと顔を覗き込むようにして会うのは、もう日課だ。
これから部活なのだろうけど、その短い時間の間だけこうして何故か会いに来ている。
(会わないでといっても、どうせ会いに来るのだからもう何も言わない)
こうして会うのは日課なのに、今吉先輩は蓮を見て少し違和感を覚えた。
反応に少し遅れたのだ。いや、返事が少し遅れた。
その理由はいたって簡単。
蓮は付けていたものを外してから挨拶したから。
耳にはめ込まれた何かを外して。
「てっきり本を読んでるかと思うてたわ。」
「今日借りてきた本は少し前に読み終えてしまって…。退屈しのぎに。」
「ふぅん。」
このまま帰ってもいいのだけど、たまにはこうして音楽の世界に浸りたい。
本は家に沢山あるのだから。。
「…自分。」
「はい?」
「片方貸せぃ。」
「へ?ちょ、何して…!」
人の制止など気にせずに外したイヤホンを片方奪われては、今吉先輩の耳にはめ込む。
なんか、コードの長さしかなくて。
変に近くて。
変にドキドキしてしまう。
「…ん?これは、クラシック?」
「好きなんですよ、クラシック。落ち着きますし。」
にこりと微笑んで。蓮は笑う。
(…にしても、よくクラシックだって判ったな…、意外に勉学は高いのか?)
「本中毒にクラシック好き。ホンマお高いなぁ蓮は。」
「ッ、そんなこと言われてもあんまり嬉しくないです。私にはバレバレです。」
「なんや、やっぱ判ってしまうんや。」
バレバレのお世辞には私には聞かないよ、先輩。
だって、私の嘘を見抜くんだから。
そして、それは私にも言えるのだけど。
今はコードの所為で縮んだ距離に変に意識をしてるので食って掛かるのは止めておく。
多分。これも先輩なら知ってるはずだから。
レンアイ・コード
(…ところで。今吉先輩は音楽とか何聴いているんですか?)
(…ワシ?)
(前に見たんですよ。イヤホンしてるところ。)