真夏の些細な悲劇
暑い日々が続く、この時期。
冷房が効いていても、この状態じゃ中々集中も出来るはずもなく。
そんな中で、一言。
「なぁ…、息抜きせぇへん?」
そんな一言から始まった。
一言によって決まったのは、今の時期だからと繁盛中の市民プール。
学校にも水泳はあるのでプールは存在するが、
今回はプライベートだからと一般的の娯楽施設に向かったわけだ。
「やっぱえぇよな、夏にプール。」
「…今吉さん、何でまた…。」
「何でって、息抜きに決まってるやろ?」
「…ま、確かに息抜きしねぇままもつらいしな。」
諏佐がそういってプール行きを同意する。
今はまだ暑い日々が続いて、たまにはこうして気分転換でもしなければ続かない。
学生は学業だ。
そのための課題を延々するには、少々堪える。
しかし、今吉は少し不機嫌な様子で携帯をいじくっていた。
「…にしても、何で来ぇへんのや。」
「誰がですか?」
「今吉、アイツだろ。確か名前は…。霧島 蓮だったか。」
“霧島 蓮”と、諏佐が言う。
みんなの中ではこの男・今吉翔一の彼女となっているが、それは本人が否定する。
誰がって。霧島蓮本人が。
実際本来ならこの場に蓮がいるはずだったが、
蓮からは“今日は用事があるので無理です”なんて言われて断られたのだ。
「せや。折角誘ったんに断りおって。」
「どうせプールなんて言ったらセクハラ紛いなことするだろ?」
「い、今吉さんに限ってそんな…。」
「諏佐…なんで判ったんや。」
少々フォローするつもりの若松が、絶句する。
セクハラする気だったのか!!なんて思っているに違いない。
いや、この場で突っ込みをしなければ誰がするのか。
男三人で息抜きをする時に、ふと聞きなれた高い声が遠くからした。
桃色の髪の女の子が、三人に向かって少々早歩きして向かう。
その彼女が、桃井さつきだとすぐにわかった。
「あー、主将!主将もプールだったのですか?」
「ん?桃井やないか。どないしたん?」
「今日プールの蓮ちゃんと約束してて。」
桃井の口から、はっきりと告げていた。
“プールの約束を蓮としてて”
「…蓮、此処に来とんのか?」
「え?はい。今来ると思うのですけど…。」
桃井は素直に蓮のことを話す。
蓮本人が必死に彼女ではないと否定するも、それを上塗りするように今吉が彼女扱いするからだ。
そんな中で、パタパタと此方に向かう音。
この現場を知っていれば。
このとき諏佐と若松が必死に戻れなんて、ジェスチャーをしていたことに気付いていたのだろうけど。
「桃井さん!早いですよ。どうかしたの、ですか………」
「よぉ、蓮。会いたかったで。」
手をヒラヒラさせて、糸目の男が嬉しそうに笑みを浮かべていた。
その時にぞわりと嫌な予感がしては蓮は咄嗟に背中を向けて歩き出す。
「……桃井さん…ボクやっぱり帰りま、」
「なぁ、そのパーカーの下は何や?ビキニか?ワンピか?
そんな必死に隠さんでも、見せてくれたってえぇやないか。」
腕を掴れ、払おうにも払えない。
そして、この状況を止めようにも止められない。
何せ、桐皇バスケ部の主将・今吉翔一だ。
この男に勝てるものなんて、居ただろうか。
「蓮さんは今日、」
「桃井さん言っちゃだめですっ!この人セクハラしてくるんですから…!」
「何言うんや、蓮。ワシがいつ脱がそうと言ったんや。」
誰もそんなこと言ってないですっ!!
というか、脱がせるなんてセクハラ以前の問題だ。
ささやかな攻防戦はほぼ無理やりな行動で打ち崩れる。
「つべこべ言わんで見せぃ。」
「ッ、わわ…!」
はらり、と前に腕を回して頑丈に守っていたパーカーのチャックを外される。
そして背中から脱がせれば見えたのは蓮のビキニ姿。
普段はスカートなんて履かないから、露にされる透けるような肌で足。
更に華奢な無駄のない柔らかそうな肉と丁度手に収まりそうな胸。
水着の色は白い肌に会うような白ベースで紺色と桃色で装飾をされている。
「……蓮。」
「やっ…!見ないで、って怖!!」
振り払った際に見えた顔、それは普段滅多に開かない目がカッと開いていた。
皆して思ったはずだ、そのときの怖さは半端ない!!
実際、この場にいた皆がその瞬間を見てしまい、それを真正面で見た蓮が一番被害者だ。
(だって、もう開けるだけで目付き悪くて怖いのに…!)
完全に嫌な予感しかしない、レンが戦慄する。
桐皇学園で、鉢合わせてしまったひとりの少女の、夏の悲劇。
真夏の些細な悲劇
(…蓮、ちょっとコッチに来ぃや。)
(たた、助けて諏佐さんっ!若松さんっ!このままじゃヤられる…!)
(諏佐や若松やなくてワシやろ?お仕置きしたろか?)