心臓警鐘は尚続く。


警鐘は静かに、されど確実にカンカンと音を鳴らせていく。



「蓮ちゃんー!」
「うわぁっ?!た、高尾…くん?!」



放課後になって、今日はいつも読んでいた本は丁度読み終わったため、
帰って別の本を読もうと思ってると、後ろから急襲。

私を下の名前でちゃん付けして、後ろから抱きつくのは彼しかいない。



「一緒に帰ろーぜ?」
「あ、あの……部活は…?」

「ん?今日は休み。だから、帰ろーぜ?」


にこりと笑みを浮かべては断るに断れなくて。
別れるまではと思っては、こくりと頷くしかなかった。

彼、高尾くんに『好き』といわれた翌日から、猛アプローチが凄まじかった。

毎回毎回後ろからぎゅうって不意打ちに抱きしめられたりして、
毎回毎回ご飯だの登下校だのでお誘いを誘ってくる。



今も、こうしてそのお決まりのアプローチがこうなって帰り一緒。
鞄もって両手を組んでは貴方がこちらを嬉しそうな顔で見てくる。

その度に、ドキドキが止まらない。



「なぁ、蓮ちゃん。」
「…ッ!た、高尾くん…?どうか、しました…?」
「ありゃりゃ、まだ慣れない?」

「っ…、今までこんなことなかったのに…。名前で、なんて…まだ、出来ないです。」



誰かを名前で呼ぶなんてない。同姓ですら、苗字呼びだもの。
それなのに、異性。まして貴方が私に好意を持ってる相手の名前なんて、呼べない。

赤らめた顔を必死に隠しながらすたすたと歩くと帰り道の遮断機が見えた。
その時、高尾くんが口を開いた。



「オレさぁ、時々不安になんの。」
「…?何が…です、か……?」

「蓮ってさ、気付いてないようだけど、結構人気あるんだぜ?
そのお淑やかながらも綺麗な佇まい、っていうの?
普段から話しかけてこないから、余計に人目につくの。」



私のどこが人気があるのだ。と目を丸くした。
そういった情報なんて、初耳だったから。

彼が告げてくると意味深に首を傾げたが、丁度前にあった遮断機がカンカンと警鐘を鳴らして下す。
だけど、高尾くんの言葉にしか頭が入らなくて、何故そうなったのか聞きたかった。



「…そ、それが…なんで、高尾くんの不安に…?」
「なんか、さ。……他の奴らに取られそうで。」

「ッ?!」



取られそうと言う前にぐいっと顎を持ち上げられて告げられた。
視線も丁度高尾くんがいて、一気に顔が真っ赤に染まる。

カンカンと煩い警鐘が、まるで私の心臓の音のように。



「だから、オレの名前を早く呼んで安心したいワケなの。」
「っ…た…高尾、く……ッ?!」



丁度電車がいいタイミングで横を渡ると、かき消すように咄嗟に重なる感触。
その不意打ちながらもしっかりと伝わるソレに最初気づかなくては、目を見開く。



「前に待ってあげるって言ってたけど。やっぱムリだわ。」
「ぁ…あ……っ。」

「早く、オレの名前を呼んでくれるようにするからさ?蓮。」



ぺろりと貴方が意地悪く自分の唇を舐めていた。
カンカンと喧しいくらいに鳴り響いていた遮断機の音が止まって道が開いた。

遮断機の音でかき消していた音と時間は、
一気に取り戻しては一気に、私の鼓動の音が警鐘のように鳴り響いていた。





心臓警鐘は尚続く。
(早く“和成”って呼んで欲しいな、蓮。)
(あぅ…あ…ぁ…き、き…キス……。)
(ありゃ?蓮ちゃん。若しかしてキス初めてだった?)