君は世界を知らない、小さくて愚かな子供だった。
だけどこの世界そのものこそが愚かな玩具であり。
その大きな玩具に弄ばれて滅んでいくのが人間だ。
人間は滅ぼし滅ぼされる救えぬ繰り返される輪廻。
その虚しく愚かな世界の中を、掌で踊る姿は子供。
「悲しい話ね。たかが生身の人間は100年も持たぬ命だというのに。」
「それが面白いとは捉えないのか?ノア・アイリよ。」
私には解らない。そこまでして、永遠の命を求める事が。
人ではないモノになってまで、得たいものの理由が。
理解できない。
「面白い?アナタは人間の愚かさを飽きるほど見たのでは?」
「あぁ、何度も見たさ。だから面白いのだ。」
「…よく解らない。私はこの世界では異端だというのに。」
そう。この世界においては私は異端。
何故ならば、私自身がこの世界の人間ではないから。
この世界、この時代の人間ではない人間。
この世界のルールには、私には通じない。
それはつまり 異端者。とでも言えばいいのだろうか。
私の世界では吸血鬼なんて夢物語。御伽噺にしか過ぎなかった。
だが、この世界では当たり前のように実現する。
目の前に居る男・アーカードこそ。その御伽噺に登場する者だった。
「私が何故この世界に呼ばれたのか…未だによく解らない。」
「お前はお前の望むように動けばいい。」
「そんな事言われてもね。この世界に望まれているなら、それでも構わない。」
戦う力を持たぬ、無力な女。それが私。この世界では、戦う事がすべてとなる。
少なくとも、それを望む魔物がじわじわと迫っていく。
「この世界にとって異端である私には理解出来ない。そこまでして戦いたい理由が。生きる為には殺さなくてはならないのって。」
「ククク…面白い事を言うな。お嬢さん(フロイライン)。だが、この世界ではそれが逆らう事敵わぬ唯一の理だ。
生きるために、生かされるために。殺すために、殺されるために。」
「唯一の理…か。でも、私だってこの世界で死にたくは無い。生き抜いて、先を見ていたいもの。」
子供は成長を知らなければ子供のまま。 辿り着けぬ夢の果てで。
小さく無力な子供は、何時何処で夢無き真実を見るのか。
「だったら、私はこの世界で生きていく。そして、アンタと一緒に居るわ。人間“乃亜藍璃”として生きて、そして朽ちるまで。」
「ほう、それは楽しみだ。…とても楽しみだ。」
笑みを浮かべる男。その隣で好戦的に笑う彼女。
戦う唯一の、べレッタを携えて。死地へと向かおう。
夜の道を、ただ。まっすぐに。
fairy tale of heretic
(差し詰め異端者の私には、この世界は御伽噺って所かしらね。)
(だがこれが紛れも無く現実だ。ノア・アイリ。)
(現実、か。)