similar of the gun
結局。夢物語と思っていたのは現実となってしまい。
私はそれを致し方なくと、内心で受け入れる事にした。
にしても、昨夜は偉い目にあった。
部屋の鍵を掛けたはずなのに、侵入されてはよろしくないデビューを迎えた訳で。
それが夢でもなんでもないと思い知らされたのは、今朝の鏡を見ては首筋にくっきりと吸血痕。
あの時からは寒くて寒くて、気温はそんなに寒いはずではないのにやっぱり寒くて。
暖を取るにしても、その時には目の前の男にしか頼める事ができず。
其の侭夜を迎えてしまったのだが…。
結局妨害された事もあって昼過ぎに起きる事になってしまった私。
(あぁ…夜更かし生活が仇となってる。ゆっくり眠れない。)
今は取り合えず一人。なので、気分転換にと屋敷内をふらふらと回る事にした。
「にしても…広いな…此処。」
自分の家とは大違いだ、と小さく呟く。
そもそも何で私がこんな不可思議と仮想世界に過ぎなかった世界に飛ばされたのかと言うのが不思議すぎる。
まぁ、一番言い伝えにしか過ぎなかった存在が此処では現実化しているのにも十分不思議なんだが。
このだだっ広い屋敷をぐるぐる。
何せ自分の部屋から殆ど出ていないため、何処が何処なのかと云うのはまったく持ってわからなかったのだ。
此処の主さんに挨拶したのだって、あの(連行した挙句に夜這い掛けて吸血してきた)吸血鬼が同行だったし。
迷子には幸いなってない。自分の部屋の場所はなんとなくだが、覚えた。
そんな中、目の前には此処の主さん。インテグラ様が。(様付けなのは何となく)
ぺこりとお辞儀。
「あ…!インテグラ様。」
「ん?その傷はどうした?」
傷。というのは、首に巻かれた包帯。そう、まさかの吸血デビューの痕跡。
(いやいや。デビューとか嬉しい物じゃないんですがね。)
吸血痕があったままだと何となく危ない気がしたので取り合えず包帯でも巻いたのだが、
流石に首に包帯巻いてちゃ大怪我したって思われても不思議ではなくて。
「え?…コレは。その…あの吸血鬼に吸われまして。」
「!!何にも無かったのか?!」
「あ、はい…。何にも起こらなかった…です。」
まぁ、所謂快感に近いものが走ったというのは別だけど…。
話を聞けば、本来吸血鬼に処女・童貞…つまり純潔を保つというか性行為を行ってない者は吸血鬼になり。
そうでない物は食屍鬼(つまりあのゾンビ)をなってしまうのだと。
自分は幸い純潔を保ったままだが、吸われた事によって人間ではなくなってしまう。
これが、この世界に於ける通常。なのだが…。
自分は思いっきり人間だった。ぬくもりもあるし、お風呂とかも入れるし、血を見ての興奮だとかは皆無。
(寧ろ恐ろしくて引いてしまうっての!)
「…お前は確か。別の世界から来たと言っていたな。」
「ハイ…。」
これはあくまで推測。での話だが、
異世界から来たことによってこの世界に於けるルールが通用しないのかもしれないと聞いた。
若しそうだったら、大事だ。
確かに人間としての死を迎えるが、この場所では戦う術を持たない人間はそう易々と生きて入られない。
ましてや、かつての世界が平和そのものだったのなら。
「…ノア。と言ったな。」
「ハイ…。」
「銃器は扱ったことはあるか?」
「えぇ?!な、無いですよ。私の世界じゃ持つこと禁止ですから。」
この世界じゃ、銃器を取り扱う事を禁止とはしていないのだろうか?
取り合えず、今度はとばかりに私の世界の話をした。
少なくとも、持つことを許される人間は決まっているし、人を殺めるための武器は許可がいる。
私の世界では。私の世界の法律がそれが当たり前。
だから、一般人は普通銃器に触れることはないのだと。
「…随分平和なところだったようだな。」
「ハイ…ですから、この世界に飛んでからは本物を初めて見たようなもので…。」
「だが、此処では戦える術が無いと生きていけない。私としては護身用で持つことを奨めるが?」
インテグラ様の話を聞けば、やっぱりこの世界は自分の居た世界とは大違いだと思い知る。
この世界。少なくともこの場所では戦うことを当たり前となる。それを改めて知らされることになった。
護身用と言っても、それを使うことは出来れば避けたい。それに…。
「で、ですが…。私こう言ったのは…。」
「初めてか?」
「…ハイ。」
自分の話をすれば、私がこういうことを言うと想像が容易かったのか。
そう。案の定。私は触れたことが無いために、持つとなっても使ったことがない。
「この先に修練場がある。銃器は好きに使っても構わない。」
「あ…どうも。」
言われたままに歩を進め、やっとのことで修練場に付いた。
(何度も迷子になったけど、警備の人とか教えてもらった…やっぱり場所とか覚えよう。)
流石に丸腰の人間を野放しに置いても仕方がないということだろうか。
適当に置かれた中で。取り合えず身の安全を考え…。
とまぁ、自分は銃器を携帯する神経は持ち合わせていない。
(というより、レプリカを見るのすら余り無いのに本物を持たされるってね)
取り合えず護身用(使うつもりは全く無いのだが)として軽いやつを何気なく手に取った。
銃って重い物を想像していたが、自分の持ったやつは思ったより軽かった。
「取りあえずこれで良いかな…。コレなら…」
「ベレッタか。」
「おわ…ッ!!」
背後から聞き覚えのある声がした。
でもそれは冷静になってから気付く物で、普通ならば不意打ちで。しかも背後から。
声を掛けられてはビックリする以外の反応は先ず無い。
「ど、ど、どこから…?!」
いきなり後ろから声を掛けられてちゃビックリするじゃないか!という突っ込みは見事スルー。
彼・アーカードは私が手に取った銃(確かベレッタって言ってたよね)を持ってはあの笑みを浮かべた。
「クク…しかもM1934か。これを使うやつがまだ居るとはな。」
「…知ってるの?」
「古いベレッタに、お前によく似た黒髪の女。何、昔に私に銃を向けた者がいた古い話だ。」
「…女?」
何故彼が古い話をしていたのかなんては解らなかった。
かつての、このベレッタを使用していた人なんて。
…まぁ、長くこの世界に留まっているのならば
このひとつの銃を使っていた人がどんなにいたって仕方ないというか、無理もないというか。
というより、私に似たっていうのも引っかかる。
私に似た、黒髪の人…?その人が彼に銃を向けた?
もしかして、懐かしく思えたのかな?とふとそんなことを思ってしまった。
similar of the gun
(ノア。お前は銃を扱った事はないのだな?)
(な…!何で知っているんですか!)
(その話を我が主としていたのを聞いていたのでな)
(ち、因みに…何処に居ました?)
(解るだろう?私がお前の部屋にどうやって入ったか)
((やっぱり…壁とかに居たのか))