Escape control
もし、実践に投与されたらどうしよう。と不安が募るのが勿論の事。
この世界では戦う術を持たないことは命を差し出すことと一緒だから。
しかし、自分はこの前までは平和そのものの世界だったし、人殺しだの戦争だの無かった平和ボケな世界だった。
(事実そうだった。)
此処の世界と比べて、自分のかつて居た世界は平和だったのだとつくづく思い知らされた。
今は訓練場。そして私は銃を持っては構えて。勿論ターゲットは生きているものではなく、唯の標的。
引き金を引く事ですらまだ躊躇いがある。
これを実践で使うことがない事を祈るばかりだ。いや、本当に。
「ほぅ?やっとまともに狙えるようになったか。ノア・アイリ。」
「流石にノーコンノーコン言われ続けたら成長します。」
散々後ろであの特徴的で不気味な笑みを刻む男・アーカード。
彼にノーコン混じりなことを言われ続けたが、やっと中心の近くで撃てるようなった。
訓練とはいえ、コレをやっているときはなんだか神経が擦り減っていそうな気すらした。
神経は擦り減っていきそうな感覚はしたが、言われ続けて黙っていられません。負けず嫌いですから。
(いや、もう人ではないものと比べても意味はないんですがね)
だが、ターゲットを狙うとか撃つ行為自体は人間と変わらないのに。
何でこうも差が酷いのだろうか。
(あぁ、戦場に出てるのと出てないのとの差ですか。それとも元々の能力の差ですか。どちらにせよ悲しい。)
「よくもまぁ二丁拳銃で戦えるよね。たまにカスールで一丁だけど。」
「ノアも二丁拳銃だろう?」
「いやいや、確かに二丁あるけど同時に使えないですから。
それにあんまりこっちは酷使したくないんだよね。何となく。」
こっち。と指したのはベレッタM1934。
その銃は前に彼が“同じ銃を使った女が居た”と話していたやつ。
(別に嫉妬とかじゃなくて、コレに関しては大事に使わなきゃと何となく思ったから。)
今使っているのはベレッタM92。このタイプの拳銃は扱いやすいから何となく好きなのだ。
(別にこだわりも無く銃マニアって訳じゃないのだが、訓練のみとしても使うならやっぱり使いやすいほうが良い。)
「で、さ。話変わるけど。」
「?」
「何でアナタの拳銃は重いわけ?片手拳銃があんな重いはず無いでしょ。」
私がそういったのは、白い銃。確かカスールだったっけ。
前に持ってみたが私が持っている銃とは比べ物にならないほど重い。
確実にキロクラスはある。片手拳銃なのに。
「ノア。そんなこと言ってたらこっちなんか持てんぞ。」
そういって出されたのは真っ黒い銃。
形としてはさっきの白い銃と変わらないのだが、持った瞬間。絶句した。というより、急に持っていかれる感覚がした。
だって、物凄く重い。
幸い持っていかれる瞬間にアーカードがすぐに持ち上げたが。しかも片手で軽々と。
「うわ…っ!これ片手で持てるっていうの?…信じられない。」
「ジャッカルが16キロ、.454カスール カスタムオートマチックで4キロもあるからな。人間には使いこなせまい。」
「いやいやいや。じゃこれ同時で20キロもある銃でぶっ放している訳ですか。
普通に持ち上げるだけでも重労働ですって。」
持ち上げるだけで筋肉とか力とかつきそうだよ。それをあんなキレイに頭とか心臓とか撃ち抜けるってね。
そう意味でもやっぱり人間離れしているんだなと思う。
(いや、それ以前に人間じゃないのですけどね。)
「人間には扱えん代物だ。」
「でしょうね。だったら私は私の限界でやるまでですけどね。」
自分の限界なんて、あんまり当時居た世界では考えた事がなかったけど。
でも、そう言う意味じゃこの世界も悪くないとは思う。
(でも神経擦り減るまでというのはどうかと思いますけどね)
Escape control
(取り敢えずノア・アイリ。お前は皆無なコントロールを何とかしろ)
(解ってますよ、…ノーコンノーコン言われてて黙ってませんから)
(ククク…それでこそお前だ。ノア・アイリ。)
(…貶しているわけじゃないですよね?)