Until day of Judgement


戦士は総てが終わるまで、涙を見せてはならない。

それが戦争屋である私の唯一無二のポリシー。
というより、じーさんの口癖であり、遺言だった。



「お前が戦う理由はなんだ。」
「アナタがそれを聞くの?吸血鬼さん?」

「前にも話したの思うけど?」



鉄と鉄の戦には情は通わない。
悲しみと悲劇を血とし、冷酷で非情を骨とする。

感情を通わせれば、迷いが生じる。
迷いは人を脆くさせる。


脆くなった人間は、最早戦士の資格を失う。
失ったら、最期。すべてを失うだろう。



「じーさんの遺言。それを守ることが恩人だと思うからよ。」
「死に行った者の言葉を守ることに、最早意味などないと思うが?」

「…解らない。戦う事が、正しいのかなんて。」



今までの教訓が脳裏を一閃のように過ぎる。
その縛られた教訓の中で、今の私がいるというのに。

だから故に強さを愛し、情を捨て、常に強き人であるために。
なぜなら、この世界は 常に地獄を語る光景だから。



「今まで地獄のような絵を、何度も 何度も見た。
だからこそ、忘れられない光景というものがあるのよ。」
「その光景とは?」



眼を瞑れば、いつぞやかに見えた絵を思い出す。
それは非常に曖昧で、非常に浮いていて この世界ではない もうひとつの世界。



「…言ってしまえば。戦場も、地獄も存在しない。もうひとりの私がその場所にいる光景。」
「それは…泡沫の夢、幻だ。」

「そうね。夢。幻。それでも構わないじゃない。」



その光景が ただの夢で、ただの幻で。それでも仮に、自分がその世界に居たとしたら。
なんて、生まれた自分にもう一度問いかける。

今までには 無かった物なのに。



強き人で、情を通わせない人で。その意識があったのは、ひとりの時だったから。
だが今ではどうだ―――?



「あんたに会ったお陰で何もかも変わった。」
「ほぅ?」


目の前は戦場跡とひとりの男。
あの夢のような。あの幻のような。

ただ一回だけなのに、焼きついて離れない光景。



「私は戦場で戦うときには感情を捨てろと教えられた。」
「それはそうだ。情けは一時の迷いを生む。迷いは戦場で死を意味する。」



死によるものは何も生まれない。そこで総てが『終』わるから。
統べての始まりは生から、統べての終わりは死から。



「そう。私にとっての戦場は敵に会ったらすぐに始まる。故に孤独を味方にしていたけど‥。」



孤独を常に自分の傍に。
それが今では、単なる弱気自分に常に言い聞かせていた『言い訳』と知らずに。

知ってしまったら 何かが音を立てて崩れ去るのではないかと言う不安も 何処かあったのかもしれないから。


当然だ。人間は情を捨てることが出来ない。
出来たとしたら、それはもう人間ではない。



「私はアナタに会った時点で死にもせず殺せなかった。それが私の敗因よ。」



何処か言い訳だったのかもしれない。
夢幻の奥底の中にあった、見ぬ筈の景色で揺り動かされた 大きな罪に。

ならば、その罪が裁かれる日を私に光として射してくれ。
罪人として 世界にない 世界を憧れた 世界への裏切り者に裁きを。




Until day of Judgement
(自分に罪が…、いや。罪から目を反らしたことが…私の罪か。)
(人間は生まれた時から大きな罪を抱えると聞くが。)
(そうかもしれない。だったら、死を迎えて裁きを受けるまで 抗わせてもらえないか。)