悪夢を見るのは毎度のこと。
だけど、そこに拍車が掛かるのは、よくあること。
「あ‥あのさ‥。」
「何だ。」
「いや、何だ。じゃなくて‥コレ、何?」
「何とは‥コレの中身に決まっているだろう?」
「輸血パック‥空っぽ‥‥‥。」
ほんの少しだけ残った空に近い輸血パックを見て、そしてなぜか飛び散っていては私に直撃して‥。
つまり、この飛び散った液体は‥‥
「いやぁあぁああ!!」
「五月蝿い。」
木霊する部屋の中で、ぴしゃりとアーカードが止めに入る。
がそんなのをなんてこともなく無視し、挙げ句に悲鳴をあげる。
そりゃ無理もないことだ。べっとりと頬に血がついたのだから。
「いや五月蝿いじゃなくて!コレ、血!」
「コレを踏んだのはお前だ。」
「いやいや、こんなに散らばってたら踏むって!」
実は、例のごとくこの男・アーカードによって地下室に連行された。
ここまでは良いのだが(いや全く良くはないのだが)
なんとかこの状況を打破しようと暴れては室内を暴れては逃走。
その時に既に散らばっていた済みの輸血パック。
まだその中に少しだけ残っていたのか、その中身がノアに掛かったのだ。
勿論かつての世界では血を見ることは余りないために、いざ掛かるとこうもなる。
ましてや、輸血パックにお世話にもなったこともないため実物を見たのも初めてだし。
「もう‥早く洗わなきゃ。」
「待て、ノア。」
幸い顔に掛かっただけで、服には付着していなかった為、服をおじゃんにするのは免れた。
そんな中、何故か声が掛かり腕を掴む。
「はい?」
「そのまま洗い流すことは勿体無いとは思わないのか?」
「‥‥は?」
「私が拭いてやろう。」
そう言って、腕を掴んだまま、おもむろに頬を舐め始めた。
もう、拭き取るじゃなくて舐め取るだ。
「ひぃ…ッ!」
小さな悲鳴をあげる。
冷たい舌のぬるりとした感触。嘗て、首筋に味わった感触。
彼は彼でまるでアイスでも舐めるような舌使い。
別に感じている訳じゃない。ただこの舐め方が余りにもいやらしく卑猥じみていたから。
「やぁ…ぁ…ひぅ…。」
「ククク…。」
一回一回やたら丁寧に舌を這わせていく。
ぞくぞくとするおかしな感触に、震えはびくびくと痙攣のように震えている。別に吸われている訳でもないのに、ゾクゾクと上り立つ何かの感触から逃れられない。
まるで、そう。あの 性的快感のような そんな。
「舐められただけで感じたか。ノア。」
「ば、馬鹿言わないで‥。こんなので感じてたら私変態じゃない。」
やっと舐め終えたのか、満足そうな笑みを浮かべる彼。
‥これで終わればよかったのだが。
「クク‥だか、これで私も楽しみが増えた。」
「はい‥‥?」
この言葉を聞いた直後、後手に回され動きを取れなくなってしまった。
何故こうしたのかは容易にわかった。
狙いが、首筋だったから。
「元々このつもりだったのだが‥お前の血が欲しくてな?」
「!馬鹿‥言ってんじゃ、ないよ。い、いちいち‥血取られてちゃ‥やぁ‥っ。」
首筋にあの冷たい舌がねっとりと這う。
この合図は吸う合図。
続いてしゅるしゅると巻かれた包帯が解かれ、吸血痕が二ヶ所。毎回吸われる場所だ。
なんとか逃げようと暴れるが、力が入らない。それに力の差が圧倒的すぎて、全力で力を出してもうんともすんとも言わないで。
「その割にはいつも力が入ってないな?ノア。お前も薄々感づいているのではないか?」
「
「お前は私のモノだ。お前を動かす心臓も、お前に流れる血も、形作る髪の毛から指先まですべて私のモノだ。」
愛の証、否狂愛の証。
それを当たり前のように言い放ち、牙をいつもの場所に突き立てる。
「っあぁあぁ‥っ!くっ、狂って‥ぁあっ。」
「あぁ、ノアの体も心を手にいれるまで。」
ずぷりと皮膚が裂かれ、血を、熱をも奪われる。
その際に出てしまう声をなんとか押さえようとも、絶対的な力がそれを拒む。
甘く甘く女の嬌声をあげてしまえば、この男はにたりと笑みを刻み、啜る音が聞こえる。こくこくと味わうようにノアの血を飲んでいく。
うっすらと意識が飛ぶ寸前に。
にたりと満足げな笑顔を見てから、途絶えたのだ。
Love mad signal
(ノア。お前は私のモノだ。未来永劫、籠の中に閉じ込め、その身朽ちるまで愛してやろう)