Tow in Rain
モノクロな雨。色のない雨。カラフルではない景色。
これが、私の世界の雨。
だけど、雨の景色は どこも一緒。
まるで、色を失ったように 冷たくて。
「何をしている。ノア。」
「あ。」
真夜中で、特に静かなのに声がしたため、声の方へと見上げた。
するとそこには赤い男の姿が。
コートに帽子はお約束なのに、あのサングラスは珍しく外していた。
夕方で既に雲が曇天だったために、降るかなと思っていたが、夜中に静かに降り始めた。
その光景を窓越しに眺めていたはずだったが、知らないうちに外に出ていたようだ。
お陰さまで自分は静かに降った雨によってびっしょりだ。
隣には、閉じられた赤い傘を添わせて。
「‥‥ノア。」
「ん?」
雨自体はざぁざぁではなく、しとしとと粒以下霧以上の雨が降る。
今までこっちの世界に来てから雨を見てなかったからか、雨自体を久しく感じた。
そして屋敷に居たはずなのに、何故今は外に出ていたのか‥。
「何をしていると訊いているのだが?」
「何となく‥雨を見ていた。じゃ、駄目?」
恐らく、私自身に理由はない。ただ久しぶりに感じただけだから。
私の世界は日本。この世界は英国。
場所も違うのに、時間も違うのに。
雨はどの世界でも、同じだったから。
「人間と言うのは益々解らんな。」
「私が違う世界からってのもあるからね。ただ久しぶりだったのよ。」
ましてや、この世界に飛んでから初めて雨を見たから。
そして世界に飛ばされていても、やっぱり時間は動いているのだと確信した。
というより、ふと思い出したように問いかける。
「ってか、アンタ雨大丈夫なの?」
吸血鬼は流水に触れられない。との話を聞いたことがある。
だから、水の上を渡るのは不可能だし‥例えば海に落ちたとなれば滅んでしまうとか。
私は特に詳しくもないので、こういった言い伝えでしか彼を知ることが出来ない。
「普通はそうだ‥だが私は例外だ。だから問題ない。」
「あ‥そうなの。」
なんだか色々と聞いた言い伝えが本当なのか自体も怪しくなる。
彼に至っては、何もかもが反則じみているから。
無理もない話なのだけど。
「だが人間はそうも言ってられんだろう。」
「まぁ、このままじゃ風邪引いちゃうからね。」
確かにこの世界ではある意味逸脱した存在なのだろうけど。
基本の人間構造は一緒です。
だから体調を崩して寝込むことだってあります。
「じゃ、あんまり迷惑掛けちゃ不味いから戻るとしますか。」
座り込んで光景を眺めていたため、ゆっくりと立ち上がる。
既に与えられた服も黒い髪も水でずぶ濡れだった。
体温も、奪われ失ったように冷たい。
そんな中、何故か肌の感触が頬に伝わる。
私と同じように、体温を感じない手が。
その手が自分以外で誰のかなんて、言うことも無いのだが。
「いつもより冷たいな。お前の肌は。」
「アンタだっていつも冷たいじゃない。」
お互い冷たい肌を寄せ合わせ。
そして、すっかり横に置いたままの開かれていない赤い傘で二人分の頭上を覆われて。
鈍色の雨模様は ただ静かに 大地を濡らしていくのを、遠目で眺めていた。
Tow in Rain
(そういえば珍しく反論しないのだな?)
(どうせ言ったって動かないのだから。でしょ?)
(クク…流石私のノアだ。)
(誰もアナタのモノになるとは言ってません)