協奏曲の合図

たまには、たまには。
だって私、名無しの肩書きは准佐だもん。



「ラグナ!」
「おわっ!‥ヒスイか。」



後ろから抱きつくようにして突進!
突進したのはヒスイで、それを不意で受けたのはラグナだ。

ヒスイはヒスイで無邪気に笑みを浮かべるだけ。
そんな彼女が、とても犯罪者の仲間入りだとは思えないほどに。



「あははっ、誰だと思ってたの?」
「それは‥なんでもねぇよ。」
「ふーん。」



ラグナが何を言いかけたのかは聞かないことにする。
お互い下手な詮索は無用。これは暗黙の了解だ。



「それよりヒスイ。」
「ん?」
「“ん?”じゃねぇよ‥何の用だ。」
「あぁ‥お腹空いたから食べに行かない?」



にっこりと笑みを浮かべて、彼女からの誘い。
この場合は誘った側が払うだとか考えるだろうが、コイツの場合は少々違う。

奢らせる、というのが定番だ。



「俺の奢りか?」
「いやいやそんな。」

「じゃヒスイが奢るのか。」



それすらも首を横に振る。
どちらも奢るとは言わないなら折半かと聞かれれば違うと笑う。



「それを今から決めるのよ。」
「何で?」

「勿論‥コレで。」



くるん、と手慣れた手付きで回すのはショットガン。勿論彼女の愛用だ。
弾はなく、それ自体に殺傷力はないが、それを補いのは予め術式を施されたカードだ。

その武器を取り出したことはつまり。
手合わせ。



「タオみてぇなことを言うんだな。にしても‥珍しいな。ヒスイから言い出すなんて。」
「たまには衛士や咎追い以外と手合わせしたいもん。」



たまには、といって笑いかけた。
そりゃそうだ。彼女だって犯罪者なので衛士や咎追いには追われる。
その点は一緒であるが、ヒスイの力は少々特殊。
特殊な特性だからか、ほぼ圧勝の形で片がついてしまうのだ。

しかし、いつかこの力が使えなくなったりとか。攻略されたときに依存したままでは困る。
そう考えたヒスイは手合いのを申し出たのだ。

奢りゲームはあくまで口実で。



「俺は構わねぇぜ?」
「じゃあ決まり。負けた方が奢る。」

「手加減は‥しねぇからな?」



ニィとどこか好戦的な笑みを浮かべては大剣を構えた。
私も嬉しそうにして、ショットガンに弾丸を打ち込んだ。それが、手合いの合図。





協奏曲の合図
(あちゃー‥やっぱり強いわ。)
(当たり前だ‥と言いたいとこだが、ヒスイも中々やるな)
(ふふっ、ありがと。)