言の葉を紡いで
普段言わない事だから。
今回ばかりは。試してもいいでしょう?
「ラグナ!」
「おわっ!な、なんだよヒスイ。いきなり。」
例によって後ろから抱きつくかのようにダイブするヒスイ=ジハード。
多分、これは最早恒例のものとなっている。
(だが、これはヒスイ自身だけだと思っているが)
「好きなものって何?」
「…は?」
「いや、だから。ラグナの好きなもの。」
話が見えないラグナは呆気ない声を咄嗟に言う。
それを鋤かさずヒスイはぴしゃりと言い放ってじっと見つめ返した。
「…なんでまた。」
「いいから。教えてよ。」
ほぼ強制的なそれに、ラグナはため息をつく。
そして、ぐしゃぐしゃっと面倒そうに髪を掻く仕草。
「ハァ。」
「ほらまたため息で誤魔化そうとする。」
グイっとヒスイは引くことなく押していく。
元衛士を思わせる仕草や考え方もヒスイにはあるが、こういうときは時々強引だ。
それは恐らく、相手がラグナだからこそなのだろうけど。
「だったらいきなり言い出した訳を言え。」
「え?そ、 それは、その…。」
「お前が教えねェなら俺も教えねェ。」
この言葉が効いたのか、ヒスイは先程の強引さはなく言い篭る。
彼女の送りつける目線は、『ズルイ』の色を表しているようで。
「うぅ…ズルイ!」
「それはお互い様だろ。」
言わないなら教えない。教えないなら言わない。
まるで、言葉遊びだ。
暫く沈黙が続くと、静寂は破られた。ひとりが、折れたことによって。
「…う、……び…、だから…。」
「あ?何て言った?」
「…今日、ラグナ。誕生日。なんでしょ…?」
観念したかのようにぽつりとヒスイは言う。
誕生日。それはその人が、この世界に降り立った日。
『どこで知った』と思わず聞きたくなるが、
この世界に於いては何でもアリという場のために敢えて聞かないことにする。
「私…誰かを祝うとか、したことないから…。どうしたらいいか、判んないだけど…。」
「あー…だったら。」
「?」
この後ラグナに言われた事に、きょとんとしてしまったけれど。
嬉しさを込めて。一言。
「ラグナ。誕生日おめでとう。」
そういえば 『上出来だ』と頭を撫でられた。
大きな手は相変わらずあったかくて、
少し照れたようなラグナの表情が、少し珍しくて印象的だった。
言の葉を紡いで
(じゃあ、これから誕生日祝いで食べに行こうよ!)
(それはヒスイが奢るのか?)
(今日はラグナの日だもの。まぁ、私が無一文にならない程度なら)