真紅より導き手

私を光だと、彼は謂う。そんなこと、ないのに。



「…あの、らぐ、な?」
「どうしたヒスイ。」


目の前にいる男は、間違いない。
辺りが薄暗くてよくみえないけど、

声と銀色の髪。そして大きな体と赤いジャケット。
その姿は間違いなく『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』だった。

よく見るといつもとは違うのは、両が赤の瞳ということ。



「ラグナ…その、手…離して…。」
「何でだ?」
「だって、そ、の…ちょっと…痛い。」



私の知ってるラグナとはちょっと違う。
こんなにも、強い感情をぶつけてこない。

ぎちぎちと腕を放さないといわんばかりに掴んで。
強く握ってるを通り越して、ちょっと痛いくらいに。



「ヒスイ。」



その声で名前を呼ばれて、びくりと肩が震える。
恐怖のそれとは違う。だけど、この感情がなんなのかよくわからない。


あと、ひとつ気付いた事は。
掴まれた感覚があるのに、腕の体温が、ない。
闇に紛れて、掴まれた部分が見れない。


ぐい、と闇に紛れた手で掴まれて、もう片方の手でそのまま後頭部をホールドする。
段々と、距離が縮む。



「ちょ、ラグナ…!」
「黙ってろ。」



普段のラグナとは、違う制止。
その低いトーンに思わずドキリとしてしまって。

彼に言いなりに軽く頷いてしまうと、顎を掴まれて目線を合わせられる。
見慣れない両目の赤が、不思議と綺麗に感じた。



「ッ、ん…っ、ふ…っ!」



不意に重なった口付け。更にぬるりと侵入されるソレで固まる。
顎をつかまれて、後頭部に体温のない腕で押さえされて、逃げ場を失う。

体温のない秘密を知るよりも、今の現状で頭も身体も一杯一杯で。



「っは…ぁ…。」
「らぐ、な…、どう、し…て…?」



キスをされ、ラグナによってされるがままに蹂躙されて。
ラグナが満足したからなのか、ゆっくり開放されればヒスイは恍惚の表情を浮かべていた。

力も入らないまま、ヒスイがその場から崩れるように膝が折れると、ラグナによって支えられる。
また、あの体温のない腕で。


そのまま流れでどさりと組み敷かれる。
力が入らないまま。体温のない腕に抱かれて。


漸く闇に目が慣れてくると、体温のない腕の正体が形だけわかる。
闇に紛れていたから見えなかったのも無理はない。

彼の、ラグナの腕は闇を象っていた。
おそらく、あれが魔導書の中身なのだろう。

そう判れば、闇の腕に強く抱かれて、ゆっくり目を閉じていく。
ラグナはそっと、耳元で囁いた。



「ヒスイ。お前を喰らう。」



沈みかけた意識の中で、それだけが響いた。






真紅より導き手
(ラグナだったら喰われても構わないのに。)