死神と少女の邂逅


宿を後にすると、くいっと手を引っ張られた。

まさか拉致?とは思ったが、彼のことだから何処かに飛ばすような事はないだろう。
と何処かで確信してた。



「…あの、何処に行くんですか…?」
「あ?俺のおススメの店。付いて来いよ。」



『あっ、はい!』としかいえなくてスタスタと後を追いかける。
やっぱり、確信は当たっていたことに安堵する。

路地裏を突き抜けて出てきたとある街の路地。
そこをまた歩けば、とある店の前で止まった。



「此処って…。」
「ここの天玉を、アンタに食わせたくてな。」



きょとんとしてしまったが、慣れたような話し口で注文する。

本当に目の前に居る男。
あのSS級犯罪者。ラグナ=ザ=ブラッドエッジなのかとすら疑うほどに。

というのも、今までヒスイは犯罪者であるという身分であるため。
ひっそりと派手な行動はしないようにと、気ままに動いていたから。

それなのに、ラグナは警戒くらいはしているだろうけど、どうも薄く感じれた。



「……あ、あの…ラグナ=ザ=ブラッドエッジ。」
「…あのよ、フルネームで言われると少しな。」

「あ、じゃ、じゃあ…ラグナで。」
「ん。それでいい。」



なんとなく空気を読んで、こくりと頷いて名前で呼ぶことにした。
この場合はさん付けした方がいいのだろうか?と思ったが許可が下りたのでこのままにすることにした。

そんな会話をしていると、あっという間に注文の天玉うどん。
(これ、結構美味しそうかも…。)

テーブルに並べられると軽くきゅるると空腹音が鳴ってしまい、
恥ずかしさを紛らわすために箸を手に取って『いただきます』と言ってから食した。
(どうしよう。ホントに美味しい…。)



「それで…ラグナ。助けてもらってるし、お礼したいんだけど。」
「ンなの別に気にしなくていいぜ?損得で助けた訳じゃねぇしな。」

「ッ、で…でも!それだと私が納得できません。」



珍しくヒスイは声を張り上げた。こんな声なんて普段出ないから少しだけ咽た。
(背中を軽く叩いてくれるラグナの優しさに涙出そうになる…)

彼の善意で私を助けれくれたのだけど。
そうだったら、ますます私のポリシーに反する。



「私、“借りた物は返す”をモットーに生きているようなものなので。
ましてや、ラグナには餓死寸前のところ助けて貰ってるし…。」



幾ら今後の縁すらあやふやだろうけど、だからこそ助けてもらったお礼は済ませたい。
究極の言い方かもしれないが、ラグナは私にとっては命の恩人なのだ。

(いや、実際そうだった!)



「なら勝手にしろ。」
「じゃあ…!」

「お供させてください。ラグナ。」



するりと手を差し伸べて、にっこりと笑うその彼女は。
『SS級犯罪者』『死神』とも呼ばれている男と行動を共にする事になった。

そのきっかけの、お話し。





死神と少女の邂逅
(どうしよう…これ、本当に美味しいです…!)
(アンタ見てると色々食わせたくなるな。)
(?)