暖かな背中越し
誰も居ないこの静かで平和な場所で。
「そういやさ、お前…。」
「ん?」
小休憩、と兼ねて広い場所で座り込んでいると。
彼・ラグナから声が掛かる。
お礼に、という名目で勝手に付いていったが、
ラグナは何だかんだといって邪険には扱わないので、その我儘で一緒に居る。ということだ。
「お前の名前、何だ?」
「………あ。」
「“あ。”じゃねぇよ。」
『ったく、』と苦笑じみてラグナはため息を吐いた。
今まで彼からは『お前』とか『アンタ』とかで言われていたから、
名前名乗ってなかったなんて言われるまで気づかなかった。
「そういえば…ラグナの名前は私から聞いたのに、私の名前は名乗ってなかったわ…。」
『堪忍してよ』とアハハと軽く笑う。
でもラグナのことだから、気にしてないと思ってたけど。意外と気にしていた事には驚いた。
座っていた大勢を立ち上がらせて、ぺこりと頭を軽く下げる。
「自己紹介遅れちゃったね。私はヒスイ=ジハード。」
「ジハード…?」
「細かい事は気にしないで。唯の“ヒスイ=ジハード”よ。」
小首を傾げてにこっと笑う。
『まぁ、別にいいけどよ。』と、ラグナは返答を返せば髪をくしゃを掻き上げた。
またヒスイは座り込んで、カチャっと組み立て式の銃を取り出してはバラした。
「お前のそれ…大分変わってんな。」
「コレ?でもこっちは普通のショットガンよ。変わってるのはこっち。」
ぺら、と懐からもうひとつの武器であるカードを取り出した。
カードは複数存在しており、それをひと束に纏めてはケースにしまっていた。
「私の術式をカードに封じ込めて銃で開放する、って感じで。
そういえば、ラグナの術式…というのかな?大分特殊だよね。」
「知ってるのか?」
「詳しくは判らないけど、見た感じそう思っただけ。」
恐らく。腕に術式の正体があるのだけど、直接見たことはないから正体なんてわからない。
それに、腕に秘密があったとしてもジャケットの下にあるのだから、
ワケ有なのかもしれないとそこまで触れずにした。
(この辺はあくまで私のカンだ、勘。)
「…じー……。」
「……なんだよ。ヒスイ。」
「眠くなってきた。寄りかかっていい?」
座り込んだラグナとはいえ、私との体格の差は歴然で寄りかかるには丁度良いかもしれないと思ったからだ。
まぁ、そんなものは彼が許してくれればの話だが。
「…勝手にしろ。」
「じゃあ勝手にしちゃう。」
許可が下りればニコニコと笑っては、『お邪魔します』と言って寄りかかった。
体重をかけたが、微動だにしないのでそのままにした。
背中には彼の体温がじんわりとジャケット越しに感じた。
「ふふ…こういうの余りないからちょっと新鮮。」
嬉しそうに笑う私が見上げる形になると、『そうかよ』といって目元を隠された。
グローブ越しに添えられた手が、ちょっと暖かかった。
暖かな背中越し
(ヒスイ。おいヒスイ。)
(すー…すー…。)
(ったく、動けねぇだろ。)