朝日は日常の合図
どんな時であろうと、いずれ朝は訪れる。
日常の始まりは、必ず訪れる。
柔らかい朝日の光に窓越しで照らされて、眠っていた意識が徐々に開いていく。
ゆっくり目を開ければ光からして朝を迎えたようで、むくりと起き上がって軽く欠伸をする。
寝足りない、ということもあるが、丁度いいタイミングで扉が開く音が聞こえると目をそちらに向けた。
「ふぁ…お早よ。」
「お、起きたか。」
「うん……起きた。」
ふぁ、とまた欠伸をして睡眠により硬くなった体をくいっと伸ばせば、テーブルにカタンと置かれる。
ふわりと漂う匂いは、目覚めには心地いい。
「ほらよ、飯。」
「…これ、ラグナが?」
「あぁ、まぁな。」
『本当に?』という意でまじまじとラグナを見てしまうと、『冷める前に食っちまえ』と促された。
ベッドから降りて椅子に腰掛けて両手を合わせる。
「……いただきます。」
軽く言って箸に手をつけて黙々と食べる。
最初の時のようにがっついて食べては居ないが、
集中してしまってヒスイは周りが見えてない状況だと言っても良かった。
「…ヒスイ。」
「ん?ふぁあひ?」
「いや、悪かった。食ったのを飲み込んでから話す。」
『ん、』とだけ声を出して頷き、もぐもぐと消化した。
ぐいっとお茶を飲んでは息を吐いた。
「…ふは、で。どうかした?」
「ホントお前って美味そうに食うよなって思ってよ。」
ラグナの意外な一言に思わず目が点になった。
大雑把に見えて意外に繊細なんだな、と思いつつ食事を続けながら話す。
それも、まっすぐな感情で。
「だってこれ本当に美味しいし…むぐむぐ…、コレ。ラグナが作ったの?」
「あぁ、まぁな。」
「羨ましいな…私も作れるけどこんなに上手く作れないもん。」
あっという間に完食した無くなった皿をちらりと見つめて。
食事には拘るくせに、ひとりで作るとなるとそこまでの達成感だとかがないからどうしても蔑ろになってしまうのも事実で。
「…それは、食えるのか?」
「?まぁ、並だから味は問題ないかな。」
蔑ろにはなるが一応生命を維持するため、最低限食べれるようにはしている。
自分自身でしか食べていないので、誰かに食してもらったことはないが、多分平気だ。
そんなことを考えていると、ポンと頭に手を置かれた。
その大きな手は誰かなんて聞く必要はなく、ヒスイは見上げた。
「だったら作ってくれよ。」
「…はい?」
「お前の得意料理。俺に食わせてくれよ。」
何気ない一言に、思わずぐらりと来た。
そんな、日常のひとつの始まりである。
朝日は日常の合図
(因みになんで食えるかなんて訊いたんですか?)
(俺の知り合いにな…とんでもないものを作るやつがいてな。)
(あぁ…成程。)