逆転する始まり
心地よい朝日。
だけど、眠りから目覚めさせてくれたのは。
ゆさゆさと、少女が青年を揺さぶる。
眠りに付いたままの青年が、じわりと意識を覚醒していった。
「ラグナ。起きてよ。」
「ん‥‥、なんだよ。ヒスイか。」
逆だ。いつもは、ヒスイがラグナに起こされるのに今回は逆。
ヒスイがラグナを起こしていた。
ラグナはくあ、と欠伸をかいては白髪の髪をボサボサに掻く。
「‥で、なんだ?」
「ご飯作ったから呼ぼうと。」
「‥そうか。ん?今なんて‥。」
「だから、ご飯作ったから。」
『呼んだの』と笑みを浮かべた。
声だけでの応答だったが、彼女の言葉にラグナは寝惚けた意識の中でヒスイを見た。
見られたヒスイは、あっけらかんとした様子で再び返した。
「前に“作って”て言うから。若しかして忘れてた?」
「そういうわけじゃねぇけどよ‥。」
不器用な台詞に思わずヒスイはクスクスと笑う。
お茶をグラスに注ぎ、ヒスイが作った料理と一緒にテーブルに並べた。
ラグナはくぁ、とまた欠伸をして席に着けばテーブルに置かれた物に目が点になった。
「ヒスイ‥これがお前の‥。」
「うん、得意料理。」
更に置かれたのは、一言で言えば焼きおにぎりだ。
表面を醤油を軽く塗って焼く、そういった至ってシンプルなおにぎりだった。
これは、料理と言うには軽食と言い表した方がいい。
「随分シンプルだな。」
「まぁ、私が米派だからね。天玉うどん好きそうだからこれも好きかなぁとか思って。」
うどんが好きなら、米も好きだろう。
という、ヒスイの方程式によって作られたものだが、醤油を焦がしたのかとても香ばしい匂いだった。
焼きおにぎりに手を伸ばし、一口口に放り込めば広がる醤油の匂い。
具は何も入ってはいなかったが、シンプルな味もまたよかった。
「ん、美味いな。これ。」
「ふふ…よかった。じゃあ私も食べよっと。」
前にもラグナには話したが、ヒスイ自身食べればそれでいいと考えなので、
自分が作る料理は並で終えているものがない
ましてや、誰かのためなんて、過去に数えられるくらいだ。
「おい、これ。」
「ん?」
「粒付いてんぞ。」
頬についたご飯粒を取る際に、いつもとは違う感触。
そう思った理由は、今のラグナの左手にはグローブがなかったから。
そうか、素手で触れられているんだ。と発覚した。
だけど、さり気ないこの仕草に変に意識してしまって。
呆然としてしまったことすら、記憶になかった。
逆転する始まり
(なぁ、ヒスイ。少しは料理くらい教えてやろうか?)
(え?どうしたの、唐突に。)
(ちっとはレパートリーぐらい増やした方がいいと思ってな。)