平和と珈琲


ここ数ヶ月はろくな睡眠も休みもなく、パシリと云う仕事が続いた。
だがひと段落片づき、やっとまともなお休みが貰えたのだ。

で。いつもなら(大体相手の気紛れで左右するが)出掛けたりするのだけど、今回はなんと。
のんびりと過ごす日となったのです。



「何もしねぇ日か‥。」
「たまには良いじゃない。たまにはさ。」



にっこりと笑っては、肩をぽん、と叩く。
そんでもって。序でに珈琲を煎れるかと問うと、要ると返ってきたために彼がよく飲む珈琲を煎れる‥勿論ブラックで。



「はい。」



カタ、と小さくテーブルに置く音を鳴らせ、相手に渡す。そして、私も珈琲を飲む。
但し、私はブラックではなくミルクや砂糖を入れた甘いタイプだが。



「‥よく飲めるよね、ブラック。」
「‥フン、ガキなんだろうが。」

「が、ガキって失礼だな!試したことはあるの!」



そう。昔に幼かった私がませて、ブラックを試したことはある。
しかし案の定。想像以上の苦さに愕然し、そのときから飲んだことはない。

今でも無理だな、と改めて思う。



「なら試してみろ。」
「無理ですって。」

「‥なら試させてやるよ。」
「‥‥お断りします。」
「‥‥。」
「無言でもイヤです。」



無言で怖いぐらいに睨みつけてくるが、あの時の苦みの余りに悶えた日を忘れられない。
そこまで嫌か、と言われるとはい。と返す。



「‥チッ、仕方ねぇな‥。」



彼が、軽く舌打ちしたのには怖かったが、そう呟くのを聞けば助かった。
‥とそう思っていた。



「よかった、助かっ‥‥、ッ!」



ぐい、といきなり引っ張り、その勢いで味わったのはあの時の嫌いな味。
それと、何回か味わった、あの感触。



「‥ッ‥!!?」



離れろ、とばかり訴えるが彼が後頭部を押さえるために離れることが出来ない。
自分の口の中は、あの大嫌いな黒い飲み物の味。

いつまで経っても離れる気配が見当たらないため、観念してはやっと飲み込むことにした。

こくっ、と喉が動く音がすればやっと解放してくれた。



「はぁ‥はぁ‥‥っ、な‥何すんの!」
「飲めただろ?」
「そういう‥問題じゃ‥‥っ。」



長い間に息をすることを止められたために、今は息が荒い。
それを解ってやったコイツはやっぱり悪魔。



「こんの‥バカ幹部様、‥っはぁ‥。」



ため息を何回彼に吐いただろうか。
せっかくの休みは、のんびり過ごすのでは刺激がなく平和かと思ったが‥どうやら違うようです。






平和と珈琲
(…。)
(そろそろ、機嫌を直せ)
(だって、苦いキスなんて…嫌。)
(…。(あとで甘いキスでもくれてやるか))